第882話 闇導姫の実力(1)
「第1式札から第5式札、寄りて光の女神に捧ぐ奉納刀と化す! 第6式札から第10式札、光の矢と化す!」
風音は向かって来るダークレイを迎撃するため、第1式札から第5式札を刀へと変え、第6式札から第10式札を光線へと変えダークレイに向かわせた。
「ふん・・・・・・!」
自分に向かって来る5条の光線。しかし、ダークレイに全く焦った様子はない。ダークレイはその光線に物怖じせずに、風音たちの方に向かって変わらず走り続けてきた。
(っ、止まらない・・・・・!?)
光線が攻撃してくるというのに、ダークレイは止まる様子がない。攻撃した本人である風音はその事に疑問を覚える。だが、風音の疑問は次の瞬間すぐに氷解する事になる。
「ぬるいのよ・・・・・・・!」
ダークレイはグローブを纏った右拳で光線を弾いたのだ。続けて左拳で2条目の光線を、1条目の光線を弾いた右拳で3条目の光線を弾き、残り2条の光線はそのまま回避した。
「光線を殴った・・・・・!?」
「無茶苦茶ね・・・・・!」
その光景を見た陽華と明夜は驚いたような表情を浮かべた。当然だろう。光線を殴り弾くなんて光景は普通は荒唐無稽なものだ。
「明夜ちゃん! 支援をお願い! 陽華ちゃんはもしもの場合に備えて明夜ちゃんを守って!」
「了解です!」
「分かりました!」
風音は2人にそう指示を飛ばすと、刀を携えてダークレイの方へと自ら接近していった。風音から指示を受けた2人は素直にその言葉に頷いた。
「はぁッ!」
「・・・・バカね、この形態の私に近接戦を仕掛けて来るなんて」
ダークレイに接近した風音が気迫を込めた掛け声と同時に刀を右袈裟に振るう。ダークレイはそんな風音の判断がまるで間違いであるかのようにそう呟くと、右手のグローブの甲で斬撃を受け止めた。
(ッ!? 斬れない? 感触は普通のグローブと同じなのに・・・・・)
ただのグローブではない。風音がそう考えていると、ダークレイは左拳を風音の腹部目掛けて放ってきた。風音は刀を引きその左拳を回避する。
「水の龍よ! 行けッ!」
風音が回避したタイミングで、後方に控えていた明夜が夏の研修で強化された力を振るう。明夜が杖を振るうと光導姫としての魔法が発動し、虚空から水で出来た龍が現れた。水の龍は真っ直ぐにダークレイの方へと襲いかかる。
「第6式札から第9式札、光の矢と化す! 第10式札、我を護る光の羽衣と化す!」
明夜の攻撃のタイミングに合わせ、回避した風音も再び4条の光線をダークレイへと放った。残り1つの式札だけは、1度だけどのような攻撃からも身を守る形態へと変化させ、光の羽衣として自身に纏わせた。
「面倒ね・・・・・・・」
明夜の水の龍、風音の4条の光線、それらが全てダークレイに襲いかかって来る。更に言うならば、風音はダークレイが迎撃か回避の行動を取った直後に、再び自分で攻撃してくるはずだ。ダークレイはそこまで見越して面倒だと言葉を呟いた。
ダークレイはバックステップで距離を取り、まずは光線を2条弾いて、残りの2条は回避した。次に襲い来るのは水の龍。そして水の龍がダークレイに向かって顎を開くと同時に、風音もダークレイに再接近した。




