第880話 光導姫VS闇導姫(3)
「それは分かってる。でも、私たちはこの闇人と戦わないといけない。わざわざ私たちを呼び出して、ソレイユ様の転移まで封じたのに、素直に私と明夜を逃してくれるとは思えないから」
「っ・・・・・・・・・!?」
だが、その事は陽華も自覚していたらしい。しかし、それでも陽華は自分たちがこの場から逃げる事は出来ないと考えていた。陽華の言葉を聞いた光司は、その可能性にようやく気がつき息を呑んだ。
「へえ、ちゃんと冷静なのね。ま、あんたの言う通りよ。私はあんた達を逃しはしないわ。絶対にね」
陽華の言葉を聞いたダークレイは、陽華の推察を肯定した。
「そういう事らしいわ香乃宮くん。だから、私たちは逃げれないというわけ。なら、この場合は香乃宮くんにお願いする選択がベストだと私は思うわ」
「だ、だが・・・・・!」
明夜の言葉に、光司は難しげな表情を浮かべる。明夜の言う事は分かる。陽華と明夜はこの場から逃げる事が難しい。この場で1番の戦力である風音が子供を安全な場所まで連れて行くというのは現実的ではない。ならば、消去法で自由に動けるのは光司だけとなる。しかし、その事が分かっていても、光司は心配から完全に納得する事は出来なかった。
「・・・・・・光司くん、私からもお願い。その子を一刻も早く安全な場所に。陽華ちゃんと明夜ちゃんは、私が絶対に死なせないから」
「ッ・・・・・・・・・・・分かったよ。君がそこまで言うのなら・・・・・・」
風音からもそう言われてしまった光司は、仕方なく首を縦に振った。光司も分かってはいた。自分がその役目をするしかないと。ただ、感情がその判断を下すのを躊躇させていただけだ。
「すぐに戻って来る! だから、それまで何とか持ち堪えて・・・・・・!」
光司は3人にそう告げると女児を抱えた。女児は光司が悪人でない事を悟ったのか暴れなかった。いや、逆に「だっこだっこ!」と喜んでいた。
「ええ!」
「うん!」
「もちろん!」
そして光司のその言葉に、風音、陽華、明夜は気力に満ちた声音でそう返事をした。3人の返事を聞いた光司は、頷くと女児を抱えてこの場から離脱した。
「・・・・・・・茶番は終わった? よかったわよ、感動的で。友情とか信頼とかそういうくだらないものを感じたわ」
その様子を見ていたダークレイは、つまらなさそうにそんな言葉を3人の光導姫に放った。
「・・・・・随分と捻くれた闇人みたいね、あなたは。あなたがこの2人を狙う理由は私には分からないけど、私がいる限りこの子たちをどうこうはさせないわ・・・・・・・・!」
「ふん、ご立派な意思ね。・・・・ご立派すぎて、吐き気がするわ・・・・・!」
風音の決意の言葉に不快感を示したダークレイは、そう言うと右手を虚空に突き出した。何かの攻撃動作かと警戒した3人は、いつでも攻撃に対応出来るように構えた。だが、結果的にダークレイから攻撃は飛んでこなかった。
「闇よ。かつての我が姿を、光に染まっていた我が姿を、闇に染まりし光の姿へと再現せよ」
代わりに、ダークレイは何かの言葉を詠唱した。そして、ダークレイは感情の込もっていない声でこう言った。
「――変身」
すると次の瞬間、ダークレイの右手の先に闇の光が発生し、ダークレイはその闇の光を右手で掴んだ。そして、ダークレイが闇の光を掴んだ瞬間、闇の光が数秒世界を照らした。




