第879話 光導姫VS闇導姫(2)
「ふーん、あれがレイゼロールの奴が目障りになると考えてる光導姫たち・・・・・・・・何か普通ね」
一方、レイゼロールから聞かされただけで初めて陽華と明夜の姿を見たダークレイはそんな感想を漏らした。
「何であなたが私たちを呼んだのかは分からないけど、私たちは来たよ! だから今すぐにその子を解放して!」
陽華がダークレイに向かって毅然とした態度でそう言葉を放った。ソレイユから聞いたダークレイの要求は、陽華と明夜をこの場に呼び出す事。そうすれば人質を解放するとダークレイは言っていると、ソレイユは言っていた。
「・・・・・・分かってるわ。約束通り、この子供は解放してあげる。でも、その前に・・・・・」
ダークレイはベルトに挟んでいた小さな闇色の瓶のようなものを地面に叩き付けた。パリンとした音が響き、瓶が割れる。するとその場所を基点としたように一瞬黒い方陣のようなものが広がった。だが、方陣は2秒ほどすると自然に消えていった。
「ッ!? いったい何をした!?」
「別に大した事はしてないわ。ただ、転移を封じただけよ。ソレイユの奴がまた転移をして、その光導姫たちを遠くに逃がさないようにね」
ダークレイの突然の奇妙な行動に、光司が警戒したような顔で声を荒げた。そんな光司とは対照的に、ダークレイは冷めた口調でそう説明をした。
ダークレイがいま地面に投げつけたのは、レイゼロールが空間転移を阻害する力を込めた瓶だ。瓶が割れれば、半径およそ100メートル内で転移などをする事は不可能になる。効果時間は、およそ30分だ。
「ほら、あんたはもう用無しだから解放してあげるわ。あっちに行きなさい。・・・・・悪かったわね」
ダークレイはそう言うと、左手で肩を掴んでいた子供から手を離し、4人の方へと軽く押してやった。最後の言葉は小さな声で子供だけに聞こえるように呟いた。
「? わかったー。ばいばい、おねーさん」
ダークレイにそう言われた女児は相変わらず不思議そうな顔を浮かべながら、てくてくと陽華や明夜たちの方に向かってきた。
「大丈夫!? もう怖くないからね!」
「早くお母さんのところに帰してあげるから」
こちらにやって来た女児を保護した陽華と明夜が明るい声で女児にそう語りかける。女児は気安い陽華と明夜に懐いたのか、「ありがとうーおねーさんたち!」と笑いながらそう言った。
「香乃宮くん! ごめんだけど、この子を安全な所までお願い!」
「もう周囲に人はいないし、1人だとこの子が不安がる。だからお願いしたいわ」
「っ!? ま、待ってくれ! それなら君たちがこの子を安全な所まで連れていくべきだ! いくら夏の研修を経たからといって、あの闇人を君たちが相手をするのは早すぎる!」
自分にそんな事を頼んできた陽華と明夜に、光司は反論した。風音がいるといっても、相手は最上位闇人だ。この前の2体の最上位闇人戦(冥・殺花戦の事)の時に陽華と明夜が生き残ったのは、一言で言ってしまえば運がよかったからだ。そして、その幸運が今回も続くとは思えない。いや幸運が続かない可能性の方が高い。光司はそう考えていた。




