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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第873話 文化祭、終幕(5)

「あのバカ前髪! よくこの状況で逃げたな! 相変わらず人として終わってる! 許さない! 見つけ出したら今度は首掴んで揺らしてやるからな!」

「は、早川さん!? お、落ち着いて〜!」

「乙女の怒りは怖いわね」

「ま、待つんだ早川さん! そんな事をしたら帰城くんが・・・・・!」

 まだ影人を許しているわけではなかった暁理は、怒りが再燃し影人を捜すべくどこかへと駆け出した。暁理のその様子を見た陽華、明夜、光司の3人はそんな暁理の暴走を止めるべく、暁理の後を追った。

「はははっ、青春だね」

 一連の様子を見ていたロゼは笑いながらそう言った。











「帰城影人はクールに去るぜ・・・・・・・ったく、間違いなく今日は厄日だな・・・・」

 暁理たちがいた場所から逃亡した影人は、誰もいない校舎の裏側に来ていた。全く酷い目に合った。暁理はなぜかガチギレするし、なぜかロゼや真夏や光司、陽華や明夜も集まって来た。自分が避けるべき人間たちが全員集まった。正直、本当に意味が分からない。

『くくっ、お前本当に何か持ってるよな。まあ、いわゆる逆にって方だがよ』

「マジで呪われてるんだろうぜ、俺は。勘弁してほしいぜ、俺は孤独が好きだってのによ」

 笑いながらそう言ってきたイヴに、影人はそんな言葉を返す。安息の孤独こそが自分にとっての癒しであるはずなのに、最近はその癒しが少ない気がする。

「ふっ、やっぱ俺はこっちだな」

 影人は校舎の壁にもたれながらコンクリートの部分に座った。自分以外誰もいない静寂。やはり、自分が好きなのはこちらの方だ。そして影人は意味もなく空を見上げた。現在の時間は6時過ぎといったところだが、空は既に暗い。星がちらほらと見える、自分がよく知っている夜空だ。

(・・・・・賑やかなのは好きじゃない。好きじゃないが・・・・・・・・)

 さっきの事や、文化祭期間の事を思い出す。こうして思い返してみれば、本当に色々あった気がする。まあ、それらのほとんどは自分にとってあまりいい記憶ではないのだが。しかし、

「・・・・・・・・だがまあ、たまにならいいかもな」

 気がつけば、影人は少しだけ口角を上げながらそんな言葉を呟いていた。

『ああ? 何がたまにならいいんだよ?』

「別に何でもねえよ。それよか、しばらく天体観測と洒落込もうぜ相棒。きっといい気分になれる」

『は? 誰が相棒だ。相変わらず頭がどうかしてるなお前は』

「ははっ、相変わらずひでえなお前は」

 影人は笑いながらイヴにそう言うと、しばらく夜空を見上げたのだった。 


 こうして、今年の文化祭は幕を下ろした。


 ――ちなみにこの10分後、暁理に見つかり影人が必死の鬼ごっこをしたのはまた別の話である。

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[一言] 乙女の執念すげぇ
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