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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第864話 弾けろ文化祭(4)

「悪い、待たせたな。それで、早速なんだが俺に話ってのは?」

 影人は気安い口調でBにそう聞いた。普段なら影人は親しくない者にはそれなりに丁寧に話す。しかし、ここにいる者たちは魂が繋がり合っている者たち、いわばソウルメイトだ。そこに他人行儀さや丁寧さはいらないと影人は考えていた。

「ああ、話というのはシンプルなものさ。我らが魂の盟友よ――俺たちとエアバンドをしてみないか?」

 もちろんと言っては変だが、Bを含めたここにいる6人も影人バカと同じバカなので同じような考え方をしていた。こいつらに救いはないのである。そして代表者であるBは、影人の質問にそんな答えを返して来た。

「エアバンド・・・・・だと?」

 Bの予想外の答えに、影人は驚いた表情を浮かべた。

「ああ。曲は俺たちが考えたオリジナル曲でやる予定だ。ボーカルは俺。こいつらは箒やモップなんかを楽器代わりに賑やかしをする予定だ。だが、俺たちだけでは完全とは言い難い。そう、なぜなら俺たちのピースには、魂の盟友がまだ1人足りない。あの時、図書室で繋がりあった全員が揃わなければ、俺たちは真の力を発揮する事は出来ないからだ。だから、君を誘いに来た」

 Bはグッと右手を握りながら熱弁した。そして、Bは影人を熱い目で見つめながら、右手を開き影人の方へと差し出して来た。

「我が風洛高校が誇る孤高の異端児、帰城影人くん。影なる勇者である君の力が必要だ。どうか、俺たちと一緒にエアバンドをやってくれないか。青春の時間は一瞬。いわゆる世間一般でリア充と呼ばれる異性や恋人と過ごす時間だけが青春ではない。熱い仲間たちとバカをするのも青春だと俺は思う。俺たちは、君とその時間を刻みたい!」

 影人の名を呼びながら、Bはそう言葉を締めた。Bの周りの者たちも熱い、熱い視線を影人に向けて来る。その視線は期待と熱意と信頼。そんなものが混じった視線だった。

「・・・・・・・・・・2つだけ聞かせてくれ。俺が入るとしたら、ポジションはどこになる? あと、いつるんだ?」

「バックでこいつらと一緒に演奏を頼みたい。演るのは明日の夕方、例年のキャンプファイヤーの前だ。もちろん、君がやりたいならボーカルを譲ってもいいさ。ボーカルはジャン負けで決まったからな。正直、変わってくれたら死ぬほど嬉しい」

 影人の質問にBはクイと眼鏡を触りながらそう答えた。最後の方に本音が漏れていて何とも情けない感じであるが、影人はそれを流した。

「そうか・・・・・・なら、バックで頼む。時間も大丈夫だしな。あんたらの熱意、確かに伝わったぜ。あんたらと共に凡人には聞こえない音楽を刻むのは楽しそうだ。短い時間だが、よろしく頼む。ええっと、あんたの名前は・・・・・」

天才あまつさいがだ。仲間からはBとか天才(笑)と呼ばれたりしている。ありがとう帰城くん、俺たちの頼みを聞いてくれて。本当に嬉しいぜ」

 影人とBこと才は固く握手を交わした。その様子を見ていた残りの5人は嬉しそうに拍手をした。

「やったなB! あ、俺は窯木篤人かまきあつとって言うんだ! 仲間内からはAとかって呼ばれたりしてるぜ! よろしくな帰城くん!」

「俺は西村慶にしむらけい! 仲間内からはCとも呼ばれてる。よろしく、歓迎するぜ!」

「俺は宮田大輝みやただいきだ! 通称D! よろしく!」

「俺、梶谷英賢かじやえいけん! 呼び名はE!」

佐藤富司已さとうふじや! 愛称はFだ!」

「ああ、よろしく」

 5人はそれぞれ影人に自己紹介した。影人は軽い笑みを浮かべながら5人にもそう言った。

 こうして、奇妙というか遂にというべきか、風洛高校が誇るバカども(本当は恥なので誇るというべきではないのだろうが)たちは、なぜか明日エアバンドをする事になった。


 ――次回、「バカたちの共演の饗宴」。ぜってえ見てくれよな(見なくていい)!

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