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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
863/2051

第863話 弾けろ文化祭(3)

「――へい、そこのイカしたジ◯ン軍人。少し俺たちとお話しないか?」

「え・・・・・・?」

 9月25日火曜日、午前12時過ぎ、文化祭2日目。連絡係としてお客の注文を家庭科室の厨房係に伝えるため、教室を出た影人は突然背後からそんな声を掛けられた。

「ッ!? あんた達は・・・・・・」

 振り返り自分に声を掛けて来た人物を見た影人は、驚いたような表情を浮かべた。そこには6人の男子生徒がいたのだが、影人はその6人に見覚えがあった。

「初めましてではないが、こうして言葉を交わすのは初めてだね。俺たちの中で、唯一偉業を成し遂げた勇者よ」

 その中の1人、眼鏡を掛けた男子生徒――通称Bが続けてそんな言葉を述べた。

「・・・・・・よしてくれ。俺は勇者じゃない、俺はただ運が良かっただけのラッキー野郎さ。本当の勇者ってのは、あんた達みたいな奴らだと俺は思ってる」

 影人はBを含めた6人に向かってそう言葉を返した。この6人は5月の中間テストの時、図書室で出会った6人だ。あの時、影人同様にカンニングの方法を模索していた、話した事はなかったが魂で分かり合えていた者たちである。

「ふっ、よしてくれよ。俺たちはただの敗者さ」

「そうさ。君に比べれば俺たちなんてな」

「君のコスプレは目立ってるから、君があの時の勇者だって分かったのさ」

「君に話しかけるのは多少は勇気がいったけど、せっかくの文化祭って事で声を掛けさせてもらったってわけだ」

「ちなみに君に話しかけるのは多少は勇気がいったから、ジャンケンして負けたこいつが君に話しかけたぜ」

 影人の言葉を聞いた6人の内5人、通称A、C、D、E、Fの5人は全員無駄に格好をつけた笑みを浮かべながら、そんな事をそれぞれ述べた。聞いてもいないのに勝手に色々と説明し始めたのは、端的に言って意味が分からない奴らだが、まあこいつらの頭を理解するのは不可能なので気にするだけ無駄である。影人同様にこいつらはバカなのだから。

「事情は理解できたが・・・・悪いがいま俺は仕事中なんだ。あんた達と話をしたいのは山々なんだが、今はどうにもな・・・・・・・・だから、話は俺が休憩時間に入ってからでいいか? あと1時間くらいは掛かっちまうが・・・・」

 実は珍しく声を掛けられて嬉しがっていた、偏屈で捻くれていて孤独好きの救いようの無い前髪野郎。しかし、前髪は今はどうしても6人の話に応じる事が出来なかった。

「ああ、それで構わない。お仕事中に邪魔して悪かった。では1時間後、2棟校舎裏で待っているよ。じゃ、また後で」

「「「「「また!」」」」」

 影人の事情を理解した通称B、又の名を天才(笑)は影人の言葉に頷いた。そして影人に向かって6人は軽く手を振りながら、影人とは進行方向が逆の廊下の方を歩いて行った。

「ふっ、どうやら今年の文化祭はちょっとは楽しめるようだな。熱いぜ・・・・・・・」

 何が全く熱いのかカケラも理解できないが、やはり頭がどうかしている前髪は6人の後ろ姿を見ながら気色の悪い笑みを浮かべそう呟いた。











「2棟の校舎裏、確かここだったよな・・・・・・」

 1時間後、休憩時間に入った影人は先ほどのBの言葉通り2棟の校舎裏にやって来ていた。文化祭で表や校舎の中が賑わっているので、校舎裏は静かなものだった。

「やあ、よく来てくれた。待っていたよ」

 影人が校舎裏にやって来ると、Bが手を振りながら影人にそう声を掛けて来た。周囲にいた5人も影人に手を振ってくれている。影人は自身も軽く手を振りながらBたちのいる場所へと近づいた。

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