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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
847/2051

第847話 文化祭、開幕(4)

「おー、お前ら着替え終わったか? 終わったんだったらさっさと準備しろよ。一応、10時半から開けるからな」

 2年7組の生徒たちが謎のシ◯アに注目している中、ガラガラと教室のドアを開けながら担任である榊原紫織がそう言って入室してきた。

「うおっ、シ◯アいるじゃん。え、お前誰だ?」

 紫織はクラスの視線が1箇所に集まっているのを察してそちらの方に自身も視線を向けた。そして、そこにいたシ◯ア、もといそのコスプレをしている男子生徒にそんな質問を投げかけた。

「? 帰城ですが・・・・・・」

「「「「「「「「え!?」」」」」」」」

 紫織にそう聞かれた男子生徒、帰城影人は一応そう答えを返した。シ◯アのコスプレが影人だと分かったクラスメイトたちは、全員驚いたようにそう声を漏らした。

「何だお前帰城か。その格好着て文化祭やるとか中々イカれてんな。つーか前髪なかったから気がつかなかったわ」

「前髪はヘルメットの中に入れてるんで。というか、イカれてるとかはやめてくださいよ・・・・・・」

 紫織の漏らした感想に、影人は嫌そうな声でそう言葉を返した。失礼極まりない担任だ。コスプレの衣装は自由だから影人はこれを着ているに過ぎないというのに。

(え、あれあの前髪かよ!? ヤバすぎんだろ!)

(よく何の躊躇もなくそれ着たな!? ていうか、普段とのギャップの差が激しすぎるだろ!? ナイアガラの滝かよ!)

(やっぱりヤバい奴だ・・・・!)

 シ◯アの正体が影人だと発覚し、クラスメイトたちは内心そんな事を思っていた。一言で言うとクラスメイトたちは、影人にドン引きしていた。

「ま、何でもアリのコスプレ喫茶だから問題はないか。ほらお前ら、さっさと開店の準備しろー」

 紫織は影人の格好を最終的にそう結論づけると、クラスメイトたちにそう指示を飛ばす。クラスメイトたちはハッとしたように影人から視線を外し、急いで動き始めた。

「・・・・・古いキャラになるから、逆に目立ったか?」

 クラスメイトたちから視線を集めた影人は、軽く首を傾げながらそう呟いた。

 まあそんなこんなで、影人も含めた2年7組のクラスメイトたちは、出し物である「コスプレ喫茶」の準備を始め出したのだった。











「ごめんこれお願い!」

「あ、ごめん! 私も!」

 午前11半時過ぎ。2年7組のクラスは活気と喧騒に満ちていた。10時半から始まった「コスプレ喫茶」だが、始まると同時に風洛の生徒たちや保護者たちが殺到し、2年7組の給仕係と厨房係はかなり忙しくしていた。

「分かりました。じゃあ、家庭科室に届けて来ます」

 給仕係が取ってきた注文の書かれた紙を預かった影人は、了解の言葉を返すと教室を出た。厨房は1階の家庭科室の一部を間借りしているので、教室と家庭科室の連絡係である影人はこのオーダーを厨房係に届けなくてはならないのだ。

「すげえ、シ◯アがいるぞ」

「はえー、気合い入ってるな」

 今の影人はかなり目立つ格好をしているので、廊下を歩いているだけでも生徒や保護者に注目されてしまう。当然だ。学校に赤い◯星がいれば誰だって注目する。影人も注目を受けていたのは分かっていたが、まあコスプレをしているから仕方がないだろうと今日は割り切っていた。

「すいません、注文持って来ました」

「あ、ありがとう帰城くん。あとついでで悪いんだけど、これ教室に持って行ってもらえないかな?」

 家庭科室の一角の簡易キッチンに立っていた厨房係の1人に向かって、影人は紙を手渡した。某漫画の蹴り技が主体のコックのコスプレをした厨房係の男子生徒は、少しぎこちないように影人にそう返事をした。

「分かりました」

 影人はお盆に乗っているオムライスとミックスサンドイッチを持ちながら家庭科室を出た。廊下を慎重に歩いていると、その途中で自分のクラスの別の連絡係とすれ違う。影人のクラスは給仕係と厨房係、連絡係がいるが、教室と家庭科室を往復しなければならないという関係上、連絡係が多めにいる。だから、すれ違いはよくある事だ。

「オムライスとミックスサンドイッチお持ちしました」

「あ、ありがと! 後またで悪いんだけどこれもお願い出来るかな?」

 影人は持って来た食べ物を給仕係の1人である女子生徒に手渡した。女子生徒もその態度はどこかぎこちなかったが、影人からしてみればそんな事はどうでもよかった。

(クソ疲れる・・・・・思っていた以上に肉体労働だぜ・・・・・・・・)

 それから20分ほど教室と家庭科室を往復し続けていた影人は、かなり疲れながらそんな事を思っていた。スプリガン形態でない影人はモヤシである。人並みの体力なんて、このパチモンのシ◯アには存在しない。

「すいません、焼きそば持ってきま――」

 何往復目かとっくに忘れた影人が、教室に焼きそばを乗せたお盆を持っていくと、教室がザワついていた。ザワついていたのは主に女子だった。

「ヤバい、あれはヤバいわ・・・・・・」

「マジで格好よすぎ・・・・・」

「本物の王子様みたい・・・・・」

(・・・・・・・・・・・・何か嫌な予感がするぜ)

 影人は丸テーブルを遠くから見つめている女子たちの反応を見ながらそう感じた。女子たちにこんな反応をされるのは、影人が知る限りこの学校では1人しかいない。

 影人は丸テーブルに1人腰掛けている男子生徒に目を移した。

「・・・・・・・ああ、やっぱりてめえかよ・・・・・」

 影人はうんざりとしたようにそう言葉を漏らす。なぜなら、案の定そこにいたのは演劇か何かの衣装を身に纏った香乃宮光司だったからだ。

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