第844話 文化祭、開幕(1)
ラブってコメってジャンケンポン。飲めや騒げや、文字通りお祭り回である。
「・・・・・・・めんどくせえ。遂にこの日がやって来やがったか」
9月24日月曜日、朝8時過ぎ。影人はいつもより少し早めに家を出て学校を目指していた。手に紙袋をぶら下げながら。
(仲直りした嬢ちゃんも今日は楽しみにしてたから、結局サボりはしなかったが・・・・ったく、適当にやってさっさとズラかろう)
影人は大きくため息を吐いた。昨日シェルディアと仲直りし1日中遊び倒した影人は、シェルディアとの別れ際に明日を楽しみにしていると笑顔で言われた。ならばやはり、影人は今日学校に行かなくてはならない。
「・・・・・だが、何だかんだ頑張ったっていうか、頑張らされたんだ。多少は楽しんでやるか。じゃなきゃ、損ってもんだぜ」
前髪野郎はそんな事を呟くと、フッと笑みを浮かべた。その笑みは相変わらず気持ちの悪い笑みであった。
「――風洛高校全生徒たち! いよいよ今日から第45回風洛高校文化祭の開始よ! 代表してこの私! 榊原真夏がその開催の宣言をするわ! みんな、思う存分楽しみなさい!」
バンッと卓上を叩きながら、元気いっぱいの声で風洛高校生徒会長である榊原真夏がそんな宣言を行った。
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」」」」」
すると、体育館に集合している風洛高校の生徒たちが歓声を上げた。男子も女子も、教職員たちもほとんどの者たちは明るい表情を浮かべていた。
「うるせえ・・・・・元気だなおい・・・・・・・」
そんな喧騒の中、影人は軽くため息を吐きながらそう呟く。全く、高校生という生物は元気に過ぎる。
文化祭初日、風洛高校においてその始まりは体育館の開会式にて始まる。なお、真夏の開催の宣言の前には前フリの余興がいくつかあった。吹奏楽部や軽音楽部が演奏したり、有志の者たちが軽いコントをしたりと、いかにも文化祭らしいものだ。捻くれ者の前髪野郎はただ長いと感じていたが、生徒たちは大いに盛り上がっていた。
「さて、今年の開催の宣言は私からだけではないわ! 今日まであなたたちや私にアドバイスを与えてくれたこの人にも、開催の言葉を述べてもらいましょう! 特別アドバイザー、ロゼ・ピュルセ氏。こちらへ!」
影人がポケーっとしながら長椅子に座っていると、真夏が続けてそんな言葉を放った。
「では、ご指名を賜ろうか」
すると舞台袖に立っていたロゼが、真夏のいる舞台中央まで歩き始めた。そして、真夏は卓上のマイクをロゼに譲った。
「ご機嫌よう、諸君。一応、この文化祭の特別アドバイザーを務めさせてもらった、ロゼ・ピュルセだ。僭越ながら、私からもという事だから、私なりの言葉を述べさせてもらおうと思う」
真夏からマイクを譲られたロゼは、流暢な日本語でそう言葉を切り出した。




