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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
839/2051

第839話 協力者、シェルディア(5)

「・・・・・・理由は単純といえば単純で、浅はかといえば浅はかです。影人に私が自分の力を託した理由、それは・・・・・・・・・影人の姿が、レールが唯一心を許した人間の姿に瓜二つだったからです。最初はただそれだけの理由でした」

「っ!? へえ・・・・・そうなの。それは知らなかったわ。当時は私の耳にもその人間の情報は入っていたけど、外見に関する情報はほとんど入ってこなかったから」

 シェルディアは純粋に驚いた表情を浮かべた。影人とレイゼロールが過去に唯一心を許した人間の姿がほとんど同じというのは初めて知ったからだ。

「手前勝手な理由ですが、私はそれを運命だと感じました。レールを救うために、長い時を経て彼に似た人物が現れたのだと。だから、私は影人を選んだんです。もちろん、今ではその事を抜きにしても、影人にスプリガンになってもらってよかったと思っていますが」

 何かを懐かしむような顔になりながら、ソレイユはそう語った。こうして思い返してみると、影人と出会ってまだ約5ヶ月ほどしか経っていない。何だかそれ以上の時間を過ごしているような気がするのに。それだけ、影人と過ごす時間が濃密だったという事か。

「そうね。影人は見た目からは想像できないほどにその精神力が強い。何より、どんな時でも諦めない。その精神力と諦めの悪さが、スプリガンをスプリガンたらしめている最大の要因と言えるわ」

 シェルディアはスプリガンの力というよりも、それを扱う影人の精神力に高い評価を下していた。影人の戦闘時における判断・思考能力。不屈の精神。それらがなければ、例え神力を振るっていても、スプリガンという存在はあれ程までに強くはなかっただろう。

「ありがとう。これで分からない事は後1つだけよ。それは即ち・・・・・・・・なぜ影人が『世界』を顕現出来たのか。ソレイユ、あなた影人に力を譲渡する前は『世界』顕現に至る領域に入っていたの?」

「いいえ。そもそも、神でも『世界』顕現に至っているのは長老と他1柱くらいしかいません。私なんかとてもじゃないですが無理でしたよ。私だって、昨日影人が『世界』を顕現させた時には呆然としたんですから」

 ソレイユは首を横に振りながら、シェルディアの言葉を否定した。『世界』顕現は一種の究極の業。本来ならば、果てしなく自己の精神を研磨して、それでやっと使えるかどうかという業だ。しかも、力の資格が一定の領域に至っていないと絶対に扱えない。ソレイユは曲がりなりにも神なので、力の資格自体はあるが、圧倒的に自己の精神の研鑽が足りていなかった。

 だから、昨日影人の視聴覚を共有してシェルディアと影人の戦いを観察していたソレイユは、影人が『世界』を顕現させた事に驚いた。それは説明のつかない現象だったからだ。

「力の資格自体は影人にはあるから、『世界』を顕現させる事は理論上不可能ではないけれど・・・・・・それでも、人間が『世界』を顕現させる事は過去に例がないと思うわ。たかだか十数年しか生きていない人間が、たまたま戦いの中で覚醒したなんて話とは訳が違う。そういう次元の話では決してない」

 シェルディアは真剣な表情で考え込むようにそう呟くと、こう言葉を続けた。

「しかも、あなたの話では影人の本質は、私やレイゼロールと同じく闇なのでしょう? それも分からないわ。神界の神々の庇護下から外されている人間なんて普通じゃない。・・・・・・・・本当に、何者かしらね影人って」

 結局のところ、帰城影人という少年は何者であるのか。それが最大の謎だ。

(何かが関わっているとしたら、影人が過去に私と同じような存在に出会っている、という事でしょうけど・・・・・・・・・それは影人本人しか知らない事。あの子が語らない限り、結局は誰にもわからない)

 もちろん無理矢理に聞く方法もあるにはあるが、それは絶対にしない。影人にとってその記憶は、同じような存在である自分を見ただけで殺意が噴き出すような、忌々しい記憶のはずだ。そんな事を、無理矢理に聞き出すなどいう事はシェルディアには出来ない。

「・・・・・・・・・・まあ、こればかりは考えてもすぐに答えが出る問題でもないわね。ありがとう、ソレイユ。満足したわ。悪いけど、私も地上に送ってくれるかしら?」

 シェルディアはそう言葉を呟くと、イスから立ち上がった。聞きたい事は全て聞けた。ならば、もう自分がとどまる理由はない。

「分かりました。それにしても・・・・・・・・まさかこんな事になるとは思いませんでしたよ。あなたに協力してもらうなんて。影人も今日は複雑そうにしていましたが、きっとあなたの事を頼りに思いますよ」

 ソレイユがどこか感慨深げにそう呟く。そんなソレイユの言葉を聞いたシェルディアは、少し悲しそうに笑いながら、

「・・・・・どうかしらね。人外だとバレてしまった私の事を、あの子は余り良くは思っていないでしょうけど・・・・・・」

 小さな声でそう言ったのだった。

「ごめんなさい。少し感傷的になってしまったわ。じゃあお願い、ソレイユ」

「わ、分かりました」

 初めてみるシェルディアの表情に少し戸惑いながらも、ソレイユはシェルディアを地上へと送った。

「シェルディア、あなたは・・・・・・・・・・・」

 1人になったソレイユは、今シェルディアが見せた表情がどうしても気になり、気づけばそう声を漏らしていた。

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