第838話 協力者、シェルディア(4)
「・・・・・・やっぱりね。どうりでスプリガンが強すぎるはずだわ。ほとんど万能な力といい、私すらも欺く認識阻害力。力が余りに強すぎる。そして、レイゼロールと同じような力もそれで納得がいくわ。レイゼロールも振るっている力は神としての力だから」
その答えを聞いたシェルディアは軽く息を吐きながらそう呟いた。これで、シェルディアのスプリガンに対する疑問は2つを除いて全て氷解した。
「スプリガンはレイゼロールと同じ、今のところこの世でただ2者の、地上で神力を振るえる者・・・・・・という事ね。だから光導姫や守護者、例え最上位の闇人たちも、影人に勝つ事が極めて難しい」
シェルディアが言っている事は、神の力や光導姫や守護者の力の仕組みを知っていなければ、あまりピンと来ない言葉であろう。
そもそも、光導姫や守護者の力は、ソレイユとラルバから与えられるものではあるが、直接ソレイユやラルバから与えられるものではない。
ソレイユやラルバは、光導姫や守護者をあくまで神の権能として、自身の眷属と規定しているに過ぎない。ソレイユならば、その眷族の状態が光導姫。ラルバならば、守護者だ。そこに、神力の譲渡は発生しない。光導姫や守護者に実力差が発生するのは、個人のポテンシャルの問題だ。
神力に関して言えば、文字通りそれは神の力だ。普通は神界でしか神はその力を振るう事が出来ない。それ程までに神力は強力だからだ。その唯一の例外は、レイゼロールと今は亡きその兄だけだと思われていたが、実は影人もその例外の1人であったというわけだ。だから、影人は男でありながら能力を使用できる。
だがそれは、その事実は――
「・・・・・・あなたはもちろん承知の上でしょうけど、人間への神力の譲渡は禁忌よ。この事がバレれば、あなたは他の神々から罰を受ける」
「ええ、そうなるでしょうね。最悪、私は神界を追放される。ですが、レールを救えるならば悔いはありません。私はこの時代で全てを終わらせるつもりです。影人と陽華や明夜・・・・・・・・彼・彼女たちの力を信じて」
ソレイユは強い意志を宿した目をシェルディアに向けてそう言った。
「そう・・・・・ごめんなさい。別に責めるとかそういった意図で聞いたのではないの。ただ、確認をしたかっただけだから。あなたの決断に、私はとやかく言うつもりはないわ」
「分かっていますよ。それくらいの事は」
「あなたに分かられるというのは、それはそれで何だか変な気持ちだけど・・・・・・・・・もう2つだけ聞かせてちょうだい。1つ目、あなたはなぜ影人に神力を託したの? それも分からない事よ」
シェルディアは続けてソレイユにそう質問した。神力を渡す前は、影人は何の力もなかった人間のはずだ。ただのとは言わない。影人は何か普通ではない秘密を隠している。昨日の戦いでシェルディアはそれを感じた。
だが、それを抜きにしても影人は一般人とほとんど変わらなかったはずだ。それなのに、なぜソレイユは禁忌を破ってまで影人に自身の力を託したのか。シェルディアにはそれが分からなかった。




