第836話 協力者、シェルディア(2)
「おいソレイユ! 信じる気かよ!? こんな俺たちに都合が良過ぎる話を、展開を!?」
シェルディアの言葉を信用し切れない影人は、まるで諌めるかのようにソレイユにそう言葉を放った。先ほど青いと言われたが、やはりどうしても影人にはシェルディアが何かを企んでいるように思えてしまう。
「見返りは、見返りは何だ・・・・・・!」
「そんなものは求めていないわ。私は、私がそうしたいと思っているからそう言っているだけだもの」
シェルディアは首を横に振って、影人の言葉を否定する。つまりシェルディアは何の見返りもなく、いわばタダで自分たちに協力すると言っているのだ。やはりそんな都合の良すぎる話はあり得ない。影人はその考えに基づき、いやいっそ支配されているとも言えるように、言葉を吐き出そうとしたが、ソレイユがその前に影人に言葉を投げかける。
「影人、どちらにせよ私たちにはシェルディアの提案を受け入れる以外に道はありません。ならば、ここは受け入れましょう。毒を食らわば皿まで。これはあなたの国の言葉でしょう」
「あらあら、毒とはひどく言われてしまったものね」
どこか諭すような口調のソレイユ。そして、ソレイユに毒呼ばわりされたシェルディアはそう言葉を述べつつも、その顔は笑みを浮かべたままだった。どうやら、機嫌は損ねていないらしい。
「確かにそう言われちまえばそうだがよ・・・・・・・」
反論の言葉は何も出て来なかった。これは影人の感情の問題であり、本来ならばにべもなく受け入れるべき提案なのだから。
「なら話は決まりです。シェルディア、あなたさえよければ――これからよろしくお願いします」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・俺からもよろしく頼む」
ソレイユはシェルディアに軽く頭を下げてそう言った。ソレイユがそう言ってしまったので、影人も頭を下げて追従するようにそう言葉を述べる。その声からは、やはりまだどこか納得し切れていない事が窺えた。
「ええ、これからよろしく。ソレイユ、影人」
こうして、シェルディアは陰から影人たちに協力する事になったのだった。
「――では、細かい調整の話なんかはまた後日としましょうか。そろそろ疲れてきちゃったし」
それから軽く計画の概要について話が一区切りしたところで、シェルディアがそんな言葉を放った。
「そうですね。まだ時間はあります。あなたの言う通り、今日はここまでにしましょうか」
「・・・・・ああ、分かった」
ソレイユと影人もその言葉に頷いた。話が一区切りした事もあるが、シェルディアの言う通り今日はもう疲れてしまった。主に精神的にだが。
「では、あなたと影人を地上に送ります。少しだけ待って――」
ソレイユがイスから立ち上がり、そう言葉を紡ごうとすると、
「私はいいわ。話は終わったとは言ったけど、最後にあなたに1つだけ聞きたい事があるし。先に影人だけ帰してあげて」
シェルディアがそんな言葉を割り込ませて来た。その言葉を受けたソレイユは、一瞬キョトンとした顔を浮かべた。




