表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
824/2051

第824話 世界顕現(4)

『この姿だけはどうにもアイツを思い出して受け付けねえが仕方ねえか。魂に触れるには必要な姿だしな』

 人ならざる影に変身したスプリガンは、少しエコーの掛かった事でそんな事を呟くと、その白い虚無の穴をシェルディアに向けた。

「ッ、あなたの『世界』に引きずられようと、何も抵抗しない私ではないわ・・・・・・!」

 シェルディアは悠然と自分に向かって来るスプリガンに向かって、右手の爪を伸ばしそれに自身の影を纏わせ振るった。およそ全ての物を引き裂くその爪撃。それが真っ直ぐに影と化した影人に飛んで行く。先ほど影人がその身に受けた5条の爪撃。それが再び影人を襲おうとした。

 だが、

『ああ、それ無意味だぜ』

 スプリガンはその白い口を三日月状に歪めながらそう言うと、回避もせず爪撃をその身に受けた。そして、爪撃はユラリと影人の体を貫通して虚空に収束した。影と化した影人の体は、無傷だった。

「ッ・・・・・!?」

『この生も死も確定していない城の中において、城主たる俺は一種の不死身。今のあんたとはちょうど逆の立場だな。こいつも皮肉ってやつか』

 驚くシェルディアにそう言葉を返す影人。その歩みは止まらない。影人のその姿を見たシェルディアはゾクリと今までほとんど感じなかったある感情を――恐怖を抱いた。

「あなたは、本当にいったい・・・・・・・・」

 恐怖からシェルディアがそう言葉を漏らす。反射的にシェルディアが後ずさろうとした時、城内の影闇から複数の鎖が出現し、シェルディアの全身を縛って来た。

「くっ・・・・・・・」

『例えお前でも簡単には引きちぎれないぜ。そいつは俺が今まで使ってた鎖とは違うからな』

 身を捩るシェルディアに更に近づく影人。ぼんやりとした影と化した影人とシェルディアの距離は、残り約10メートルくらいといったところか。

『何年生きたか知らないが、もう十分に生きただろ。もう潔く諦めて死を受けいれろよ』

 残り距離が8メートルを切った。人の形をした死がシェルディアのすぐそこまで近づいて来ている。死、それを生きていて初めて実感したシェルディアは内心でこんな事を思った。

(死が私に迫って来ている。私が長年ずっと望んでいた死が・・・・・不思議ね。私は今その事に恐怖している。昔の私なら、やっと死ねると考えるに違いない。この長すぎる生からやっと解放されると。・・・・・・・・でも今は、今は違うのよ。今の私は死を望んでいない。私はまだ死ねない。私はもっと、あの子と何気ない平和で暖かな日常を、過ごしていたい・・・・・!)

 シェルディアの頭に浮かぶのは、隣人たる少年の姿。前髪が長くて、シェルディアもその目を見た事が未だにない少年の姿だ。その少年と過ごす日々が、今の自分の生きる楽しみであり、宝物なのだ。

「そうね。あなたの言う通り、私は長く生きすぎた。本来なら、潔く死ぬべきなのでしょう。・・・・・・・でも、悪いわね。往生際は悪くさせてもらうわ。私は・・・・・・・・生きてみせるわ!」

 シェルディアが強い決意を秘めた目でそう言葉を放つと、シェルディアにある変化が訪れた。シェルディアの瞳が真紅に変わり、ブロンドの髪が銀色に変わり始めたのだ。そして、シェルディアはその身にその瞳と同じ真紅のオーラを纏うと、自分の体を拘束していた鎖を引きちぎった。

『ッ、マジかよ・・・・・・・』

 これには影と化した影人も驚いたようだった。鎖から解き放たれたシェルディアは、真っ直ぐにその赤に変化した瞳をスプリガンに向ける。

「まさか『真祖化しんそか』を使わされる事になるとは思わなかったわ。私のこの姿を見たのは、本当に片手の指で数えられる程の者しかいない。つまり、あなたはそれ程までに私を追い詰めた」

 銀の髪と真紅のオーラを揺らしながら、シェルディアはそう言葉を述べた。この姿は、シェルディアの本来の姿だ。絶対最強たる真祖としてのシェルディアの姿。力が強すぎるので普段は封印している。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ