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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
809/2051

第809話 星が降る(1)

「・・・・・・そう。それがあなたの答えなのね。残念だわ。あなたはやはり、大バカ者の愚者だったようね」

 影人のスプリガンとしての答えを再度聞いたシェルディアは、落胆したように息を吐いた。そしてどこか冷めたような目を向けながら、こう言葉を続けた。

「私は2度あなたにチャンスを与えた。でも、あなたはその2度のチャンスを不意にした。ならば、もう仕方がないわよね。どうしようもない程に、仕方がない。今の答えで、あなたへの興味よりもあなたへの不快さが勝ったわ」

「そいつはありがたい事だな。お前みたいな化け物に興味を抱かれるのはもう沢山なんだ。どうぞ俺を嫌ってくれ。俺もお前が大嫌いだからな」

 不機嫌になったシェルディアに、影人は笑みを浮かべながらそんな言葉を送った。その言葉は強がりであり、影人の本音だった。

「・・・・俺はお前を殺す。何度でも言ってやるぜ」

「出来ない事を繰り返し言うのは、正直に言って愚かだし、恥ずかしくて見てられないわ。見苦しいわよ、あなた」

 影人の何度目かになるその宣言に、シェルディアはつまらなさそうに鼻を鳴らした。そして興味の光を失った目は明確に冷淡さを灯した目になり、笑みは嘲笑へと変わる。

「そもそも、ここからどうやってあなたは私を殺すというの? 不死のこの私を。更に言うならば、あなたは既に極限まで疲弊しているはずよ。ゼルザディルムとロドルレイニとの戦いでね。その上で、まだ私と戦い生きているのは、まあ凄い事だけど。ねえ教えて頂戴よ、スプリガン。あなたはそんな状態でどうやって私に勝つの? 奇跡が起きても、そんな事にはならないというのに」

 わざとらしく首を傾げながら、吸血鬼は嗤う。それは挑発の言葉でもあるが、どこまでも事実である言葉であった。まだ闘志を失っていないというのは、まあ立派と言っておこう。だが、それだけだ。言うは易し行うは難し。いや、この場合は行うは不可能といった方が正しいか。

「・・・・・てめえのうざったい言葉は事実だ。それは認めてやるよ。俺はかなり疲弊している。正直、まだ倒れてないのが自分でも不思議なくらいだぜ。そんな俺が、こっから俺がお前に勝つ方法を、お前を殺す方法は正直いくら考えても見えない。そいつも素直に白状してやろう」

 嘲りを含んだその問いかけに、影人はいっそ清々しい程の気持ちで自身の本音を口にした。多分だが、自分が敵に対してこれほどまでに自身の内情を素直に吐露したのは初めてだろう。

「・・・・? 分からないわね。私を殺すと言っておきながら、そんな事を素直に言うなんて。やはりあなたのさっきの言葉は虚勢だったのかしら? それとも、急に気分でも変わったとでも言うの?」

 素直に過ぎる影人の心情の吐露を聞いたシェルディアは、訝しげな目を影人に向けた。単純に意味が分からなかったからだ。スプリガンがそう言った意味が、シェルディアには理解できなかった。

「別にそうじゃない。ただ事実として認めただけだ。いま言っただろ。そして認めたからこそ、決めるべき覚悟ってやつも出来るわけだ」

 影人はそう言葉を述べると、自身の右手に意識を集中させた。影人が決めた覚悟。それを実行するためだ。

(憎悪を燃やせ。殺意を燃やせ。怒りを燃やせ。いま俺が抱けるだけのありったけの負の感情を全力で燃やせ。それが俺の力になる・・・・・・・・!)

 影人は自身の禁域の鎖が緩むのを明確に自身で感じながら、自身の負の感情を全開で全力で燃やした。影人が纏う身体強化の闇のオーラのようなものの揺らめきが、その激しさを増す。だが、まだだ。まだこんなものでは足りない。()()()()()()()、もっと負の感情を燃やしていたはずだ。

「黒い炎よッ! この身を焦がし切るほどに燃えろ! 天を灼くほどに! 化け物を殺すために! 燃えやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」

 影人は叫んだ。恥も外聞もないほどの大声で、魂の底から叫びを上げた。それはきっと、スプリガンがこれまでで1番大きく叫んだ声であった。

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