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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
803/2051

第803話 再びの戦い(3)

「黙れよ・・・・・・・! 分かった風に言ってるんじゃねえぞ・・・・!」

 苛立ちを隠さない声で、影人はそう言った。まるで自分の中が見えているかのようなその口ぶり。化け物だと知らない時はよかった。特に気にもならなかった。だが、シェルディアが純粋な人外の化け物だと分かった今、その口ぶりが無性に影人を苛つかせる。

『おい影人、らしくねえぞ。冷静になりやがれ。このクラスの化け物に、怒りに身を任せての攻撃なんか意味がない。あいつの言葉が、お前の触れちゃいけない部分に触れたのかもしれねえが抑えろよ。じゃなきゃ、負けは確定だ』

 苛立っている影人に、イヴが忠告の言葉を与えた。イヴの言葉は正しいものだ。どこまでも正しい。その事は影人にも分かっている。

「っ・・・・・」

 だから影人はギリッと奥歯を噛み締めながら、何とかこの苛立ちを抑えようとした。そう。この苛立ちは、シェルディアに勝つのに、殺すのに邪魔なものだ。怒りという感情は、爆発的な力を与える事も時にはあるが、その多くは動きを単調にさせたりミスを誘発する事がほとんどだ。

(・・・・・・・・サンキュー、イヴ。お前の忠告のおかげで多少は頭が冷えたぜ。お前の忠告がなかったら、たぶん俺はそのまま突っ込んで死んでた)

 影人は心の内でイヴに感謝した。シェルディアは強い。それは最初にシェルディアから蹴りを受けた時に、約3000の造血武器を影人に放った時から分かっていた事であり、あのゼルザディルムとロドルレイニを殺して下僕にしたという事からも分かる事だ。

「あら、怒りを噛み殺したのね。さすが、と言うべきかしら。感情をコントロールするのは、難しい事だから」

 影人が怒りを抑えた事を感じとったシェルディアがそう呟いた。そして、座っていた椅子から立ち上がると、その椅子を影に沈めこう言ってきた。

「では再び戦いを始めましょうか。ああ、安心してちょうだい。もう何かを呼び出しはしないわ。ゼルザディルムとロドルレイニが敗れた今、他のモノたちがあなたに勝てるとは私も思っていないし」

(ッ、来るか・・・・・・相変わらず、えげつないプレッシャー放ちやがる)

 影人は即座に身構えた。それはシェルディアが威圧感を急激に高めたからだ。爆発的なまでの重圧プレッシャー。しかし、ここで気圧されなどはしない。気圧されれば終わりだ。

(結局、力の残量は4割あるかないか。更に、こいつが本当に不老不死だとして、俺はこいつを殺せると考えている方法を1つしか思いつけていない。もしそれが通らなきゃ、それ以外の方法を思いつけなかったら、俺はそこで詰む。・・・・・・・・改めて考えてみると、絶望的にマズイ状況だな)

 影人は冷静に今の自分の状況を分析した。まず力の残量についてだが、これはシェルディア相手には心許ないとはいえ、まだ大丈夫と言える問題だ。残りの力の総量が4割でも、影人は普通に戦える。更にいざとなれば、負の感情を燃やして燃料にする事も出来る。

 問題はシェルディアを殺す方法を、影人がまだ1つしか思いつけていないという事だ。そして、影人が現在思いつけている唯一の方法は、ゼルザディルムとロドルレイニを葬ったのと同じ、『破壊』の力だ。弱点があるのかどうかはまだ分からないが、あるならばそこに『破壊』の力を流し込み、もし弱点がなければ、全身を一瞬で破壊できる程の『破壊』の力を叩きつける。それだけだ。

(不老不死・・・・・普通なら、そんな不滅の存在はあり得ない。だから、ブラフだと思うとこだ。実際、俺は最初そう思った。だけど、こいつに至っては違う。今になってわかる。生物として格が、戦慄している俺の魂が、それは真だと感じている)

 シェルディアは不老不死。それは嘘ではないと、今の影人には思える。ゆえに、やはりシェルディアは不老不死という前提は崩せない。

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