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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第795話 竜の弱点を探せ2(4)

(だが、なぜこの弾は私に弾かれたのか。その理由は分かりませんね。この弾だけ、私たちの鱗を貫通させる力を付与していなかった理由が分からない)

 ロドルレイニの疑問はもっともな疑問だった。そしてその答えは簡単なもので、弾道の軌道を変える力と『破壊』の力を銃弾に付与する事は出来なかったからだ。基本的に『破壊』の力は物質に付与する事は可能だ。しかし、その他の概念的力とは両立できないという特性があるのだ(ただし、自分の肉体だけは例外)。なぜなら、『破壊』の力はそのもう1つの概念(この場合なら、「弾道軌道を変える力」)を破壊してしまうからだ。だから影人は3射目の弾丸に『破壊』の力を付与せず、あくまで隙作りを目的として、4射目の心臓を狙う一撃を本命にしていた。

 ちなみに、ならばなぜ最初のゼルザディルムの狙撃の時にイヴが弾道を固定できたのかという疑問が浮かぶだろう。あの時の弾丸は『破壊』の力を付与されていた。であるのに、なぜロドルレイニの狙撃の時は『破壊』の力を付与出来なかったのか。それは、力の付与先に関係している。

 弾道を固定する場合は、その力の付与先が弾丸でも銃本体でも構わない。弾は真っ直ぐにしか飛ばないからだ。だから、影人は力の付与先をこの時は狙撃銃本体にした。

 だが、弾道を変える場合は、その力の付与先が弾丸でなくてはならない。なぜなら、その場合動くのは弾だけだからだ。ゆえに、銃本体に力は付与できないのだ。

 以上のような理由と『破壊』の力の性質によって、影人は3射目の狙撃の時に『破壊』の力を付与出来なかったというわけである。

「・・・・・分からぬ事を考えても意味はないですね。私がいま考えるべき事は、それではない」

 ロドルレイニは前方を振り返る。そこには自分が投げ飛ばし、ゼルザディルムが半壊させた2体の闇の騎士たちがいる。闇の騎士たちは、距離を計るように剣を構え自分たちの様子を窺っている。

「しかし、奴は策士だな。先ほどから我らに隙を作り、それを上手い具合に突いてくる。我らが竜族でなかったら、何回かは既に死んでいるな」

 ゼルザディルムが軽く息を吐きながらそう呟く。その呟きに、ロドルレイニは鼻を鳴らす。

「そんな事は既に分かりきっている。無駄口を叩いている暇があるならば、この造兵たちを蹴散らすぞ」

「貴様は相変わらずの堅物さだな。竜族でもお前ほどの堅物はそうはいなかった事を思い出す」

 ゼルザディルムがどこか呆れたようにそう言葉を返す。2竜がそんな言葉を交わしていると、その事をチャンスと捉えたのか騎士たちが意を決したように突撃してきた。ゼルザディルムとロドルレイニは意識を騎士たちに向け、騎士たちが振るって来た剣を避けると、それぞれ騎士たちに反撃した。

「貴様たちの動きは既に見切った・・・・!」

 ロドルレイニは凍気を纏わせた左手を貫手の形にすると、それを騎士の胸部に突き刺した。そして、そこを基点として騎士の全身は瞬時に凍りついた。唯一、剣だけは依然凍らなかったが。

「人形遊びは悪いが飽いている」

 ゼルザディルムは半壊している騎士の頭部を完全に蹴り砕いた。ゼルザディルムに頭部を蹴り砕かれた騎士はその動きを急に止め、完全にその場で静止した。

 2体の闇色の騎士は、完全に無力化された。

「・・・・・はっ、ご苦労さん。ありがとよ」

 だが、その光景を見ていた影人は焦るでもなく、逆に不敵な笑みを浮かべると、左手で小さく指を鳴らした。

 そして、それを合図とするかのように、

 騎士たちの体が徐々に膨らむように肥大した。

「「ッ!?」

 凍った騎士と頭部が消え半壊した騎士。無力化したはずの2体が膨らんだのを見たゼルザディルムとロドルレイニは、何事だと表情を変える。

 そして、2体の騎士たちは限界まで膨張し、やがて2竜の至近距離で爆発した。ゼルザディルムとロドルレイニは、その咄嗟の出来事に防御姿勢を取った。無論、ただの爆発では2竜は傷1つつかない。しかし、闇色の騎士たちの剣が自分たちにダメージを与えるものだと知っていた2竜は、この爆発も自分たちにダメージを与えられるものではないかと思い、咄嗟に防御したのだった。

 爆発は中規模程度のものだった。しかし、爆心地にいた2竜にとってみればそれは大規模な爆発と変わらない。2竜は爆風で後方へと飛ばされる。

(・・・・・・・どうだイヴ。弱点は分かったか?)

 その光景をしっかりと見ていた影人は、心の中でイヴにそう問いかける。影人のもう1つの本命は、今の爆発だった。

『ああ、大体わかったぜ。あいつらの弱点があると思われる場所がな。ま、確証はねえけどな』

(充分。あんがとよ。出来たら最悪()()()()()()()。よし、なら仕掛けるか。あいつらにどうやって直接『破壊』の力をぶち込むかのプランはもう考えてあるしな。イヴ、あいつらを殺し切るための高密度の『破壊』の力を練っといてくれ。そんだけお願いするぜ)

『仕方ねえ。やっといてやるよ』

 イヴがやれやれといった口調で影人の頼みを了承する。その言葉を聞いた影人は感謝の意味をかねてコクリと頷くと、ボソリとこう言葉を呟いた。

「さて・・・・・終幕といくか」

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