第794話 竜の弱点を探せ2(3)
「しかし、超再生がある私たちにはやはり無駄です」
ロドルレイニはそう呟き、掴んだ剣を起点として闇の騎士を投げ飛ばした。そのため剣はより深く肌に食い込み出血も増加したが構うものではない。その証拠に、剣を離した瞬間にロドルレイニの左手はすぐに傷が修復され始め、2秒後には完治していた。
(という事は、この2本の剣もおそらく同様ですね。傷は受けますが、直接掴んで握りつぶしますか)
ロドルレイニは再び自分を突き刺そうと狙って来ている2本の剣にそう予想し、両手でその剣を掴もうとした。確実に掴める。ロドルレイニは自分が息をしている事のように当然と考えていた。
だが、
「はっ、後ろに注意だぜ。白トカゲ」
影人が遠く離れた位置でそう呟くと、
「ッ!?」
ロドルレイニは自分の背中にガンッと何かが当たった感覚に襲われた。背後からの何かの衝撃。その事に驚いたロドルレイニは、掴めるはずの剣たちを掴めずに、両腕の付け根当たりに剣が突き刺さってしまった。
「ぐっ・・・・・!?」
思わず苦悶の声を挙げるロドルレイニ。超再生があるといっても竜にも痛覚はある。大きなダメージを受ければ当然それ相応の痛みが襲ってくる。
「そこだ・・・・!」
ロドルレイニに剣が突き刺さったその瞬間、影人は引き金を引いた。今度は『破壊』の力を込めて。影人が放った弾丸は、真っ直ぐにロドルレイニのある箇所――胸部の中央辺り、人間でいえば心臓がある位置に飛んでいった。
ほとんど確定のタイミング。今のロドルレイニにこの銃弾をどうにか出来る方法はないはず。しかし、その銃弾はゼルザディルムに阻まれた。
「ふっ・・・・・・・!」
自分の相手をしていた闇色の騎士を半壊させ蹴り飛ばしたゼルザディルムは、刹那のタイミングを見極め飛来する銃弾を燃え盛る爪で切り裂いた。切り裂かれた弾丸は燃えながら地面へと落下した。
「チッ、余計なことしてくれるぜ・・・・・・」
その光景を見た影人は思わずそう言葉を漏らす。今の一撃が通っていれば、もしかすればそのまま殺せたかもしれないし、そうでなくとも弱点の候補がまた1つ削れたかもしれないというのに。
「ゼルザディルム、余計な事を・・・・・!」
「そう睨むな白竜の。一応、助けてやったのだからな」
「それが余計だと・・・・・・・言っているのです!」
ロドルレイニは自分の体に突き刺さった2本の剣を両手で掴むと、それを引き抜き刀身を握り砕いた。バキッと派手な音を立てて、2本の剣は地面に落ち、やがて虚空へと溶けていった。剣が刺さった箇所と両手の傷は、すぐさま修復される。
(先ほど背中に何かが当たった。あれはいったい・・・・・)
ロドルレイニは後ろを振り返り周囲を見渡した。先ほど背中に感じたあの感覚。あれのせいで自分は余計なダメージを受けてしまった。
「ッ、これは・・・・・」
そして、ロドルレイニはその正体を知る。地面を見てみると、闇色の弾丸が1つ落ちていた。先ほどスプリガンが放った弾丸は切り裂かれて前方に落ちているので、その弾丸ではない。となると、答えはその1つ前、3射目に放たれた弾丸という事になる。自分とゼルザディルムの間を素通りしていったあの弾丸だ。
(私の背中に当たったのはこれという事ですか? しかし、なぜ真っ直ぐに進んでいったこれが私の背に・・・・・・・考えられるとすれば、彼が意図的にこれを曲げたという事くらいですか・・・・・)
ロドルレイニのその予測は当たっていた。影人は3射目の弾丸に弾道軌道を変える力を付与していた。これは過去に2度目のフェリート戦で使用した「弾丸の自動追跡」の応用だ。今回は分裂は必要なかったので使わなかった。




