第792話 竜の弱点を探せ2(1)
「おい、白竜の。今度は貴様の方に来たぞ。丁度いい、我も頭に受けたからお前も受けろ」
「ふざけた事を抜かすな。先ほどの攻撃はお前が鈍重だから受けたのだ。私は貴様のように鈍重ではない」
影人が狙撃銃の引き金を引き、ロドルレイニに闇色の弾丸が向かう。その事を確認したゼルザディルムはロドルレイニに冗談半分でそんな言葉を掛けた。だが、ロドルレイニはゼルザディルムの言葉に顔を顰めた。
「ふん。こんなもの、見えていれば避ける事など雑作もない」
ロドルレイニは顔をスッと横に傾けて、銃弾を躱した。ロドルレイニからすれば、音速を超えた速さなどは大した速さではない。銃弾はロドルレイニの美しい白銀の髪を擦り、そのまま直進していった。
「行くぞ、ゼルザディルム。奴に再び接近する」
「おう。次で捕まえて我々の勝利と決めるか」
2竜はそう言葉を交わし合うと、影人の方に向かって神速の速度で駆けてきた。ゼルザディルムとロドルレイニの人竜形態でのトップスピード。普通の者ならば、その影すら捉える事は出来ない。
「・・・・・・行け、お前ら」
しかし、2竜が相対している男は普通の者ではない。凡そ全ての闇の力を扱い、自身の眼を特別な眼へと変える事の出来る異常者であり怪人だ。影人はゼルザディルムとロドルレイニの駆けている姿をしっかりとその目で捉えると、自分の前方に創造した闇の騎士2体にそう命令した。
「「・・・・・・・・!」」
影人の命令を受けた騎士たちが、剣と盾を構え前方――ゼルザディルムとロドルレイニの真正面に走り始める。そして2竜と2体の闇の騎士たちは、影人から200メートルほど離れた場所で激突し合った。
「どけ。魂なき操り人形と遊んでいる暇はない・・・・・!」
「まあ、その通りよな・・・・・!」
ロドルレイニとゼルザディルムは、自身の両手に凍気と炎を再び纏わせ拳を振るった。どちらも右拳だ。その拳は真っ直ぐに闇の騎士たちの胸部へと向かう。
「「・・・・・・・・!」」
闇色の騎士たちは、しかしゼルザディルムとロドルレイニの攻撃に反応し左手に持っていた盾を、自分たちの前へと構えた。2体の竜の王の燃える拳と凍気渦巻く拳を受けたその盾は、たった一撃で砕け散った。
(盾は割れたか。まあ、それはどうでもいい。よく反応した方だ)
2体の闇の騎士の後方からその光景を観察していた影人は素直にそう思った。当然といえば当然の結果だ。いくら影人があの2体の騎士たちを創造する際に、力をかなり注いで強く設定したといってもやはり限度というものがある。盾の強度も普通の造兵の騎士の強度の何倍もあるといっても、やはり相手は竜。その攻撃力はこの戦いを通して影人もよく知っている。
そしていま述べたように、今回影人が創造した2体の闇の騎士がかなり強めになっているといっても、相手が規格外の敵である竜ならば限界がある。より簡潔に言えば、2体の闇の騎士はゼルザディルムとロドルレイニには絶対に勝てない。
まあ、これも当然と言えば当然で、ゼルザディルムとロドルレイニはその1体1体が、現在のレイゼロールと同等かそれ以上の力を持った存在だ。そんな2竜に、造兵程度が勝てるはずがない。数十秒は耐えるだろうが、良くてそれだけの結果に終わる可能性が極めて高い。




