第788話 竜の弱点を探せ1(1)
(せっかく距離が取れたんだ。その事は、多いに利用させてもらうぜ。また近接戦は今はゴメンだからな・・・・・・・!)
影人は向かって来るゼルザディルムとロドルレイニから逃れるようにバックステップで後方に下がりながら、周囲の空間に呼び出していた200のナイフを2竜に放った。ナイフはまだかなり離れた距離にいるゼルザディルムとロドルレイニに素早く向かっていく。
「む? また何かを飛ばしてきたな。見たところ小さな刃物の群れのようだが・・・・・」
「面倒だ。このまま全て蹴散らしてくれる」
ゼルザディルムとロドルレイニが影人が放ったナイフの群れに気がつく。そしてそのナイフの群れを見たロドルレイニは、駆けながら右手を大きく後ろに引きその手を鉤爪状にした。その右手には凍気が渦巻いていた。
「ふんッ・・・・・!」
ロドルレイニが凍気纏う右手で思い切り前方の空間を裂いた。ナイフの群れとロドルレイニたちの距離はまだまだ離れている。よってロドルレイニの右手が裂いたのは正確には虚空だ。しかし、それは古の竜の王たるロドルレイニの攻撃だ。それだけで終わるはずはなかった。
ロドルレイニが振るった鉤爪状の右手の軌跡から、5条の白く巨大な斬撃のようなものが発生した。その5条の斬撃――いや爪撃とでもいうべきものは、真っ直ぐに空間を進んでいき、やがてナイフの群れへと激突した。
爪撃に触れた闇色のナイフたちは、触れた瞬間に凍り切り裂かれていく。5条の爪撃は影人が放った200のナイフの内、およそ150本を凍らし切り裂いていき、それでもその勢いは衰えず、爪撃はナイフの群れを超えその直線距離上にいた影人の方へと向かってきた。
(ッ・・・・・・・相変わらず規格外だなおい・・・・・!)
影人は自身をも襲わんとする5条の爪撃を右のサイドステップで回避した。爪撃はそのまま真っ直ぐに虚空を進み続け、やがてフッと溶けるように霧散した。
(だが、まだ50本くらいは残ってる。せいぜい役立ってくれよ、お前ら)
影人は視線をゼルザディルムとロドルレイニの方へと戻す。ロドルレイニの規格外な攻撃によってナイフはかなり数を減らしたが、まだ数十本は残っている。影人はナイフによる攻撃で、ゼルザディルムとロドルレイニが弱点を庇うような対応をしないか、しっかりと見つめた。
「チャチな刃物よな。こんなものは、等しく我らの前では無意味よ」
「それは当然そうだが、先ほどの鎖のようにどれか数本だけ我らの肉体に届き得る物が紛れているかもしれない。私たちには超再生があるとはいえ、気は抜かない事だ」
残った50本ほどのナイフが、ゼルザディルムとロドルレイニに殺到する。2竜はそんな会話をしながら1度足を止め、ナイフを自分たちの肉体で叩き落とし始めた。
「・・・・・・・・・・・」
影人はその光景を離れた場所からジッと見つめ続ける。それは観察のためだ。しかし、ただ見つめ続けているだけではない。影人は次にこの距離間を維持しながら、どうやってゼルザディルムとロドルレイニを攻撃し続けその反応を観察できるか、そのプランのようなものを考えていた。




