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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
783/2051

第783話 人竜の力(5)

 今度も鎖は弾かれる。そう思われた。

 しかし、

「「ッ!?」」

 今度は()()()()1()()、4本の内、計2本が背中からゼルザディルムとロドルレイニの肉体を貫いた。残りの2本は先ほどと同じように、2竜の肉体に弾かれたというのに。

(はっ、バカが引っ掛かりやがったな!)

 2竜がその身から赤い血を飛び散らせたのを確認したのを見た影人は、自然と笑みを浮かべていた。

(その鎖2本だけ予め『破壊』の力を付与しといた。それならてめえらの肉体にダメージを与えられるからな。とはいえ、最初の鎖を無視したのは予想外だったがな)

 影人はゼルザディルムとロドルレイニに隙を作るために、軽い罠を仕掛けていた。無論、ゼルザディルムとロドルレイニの皮膚が竜の鱗のように硬い事は予想していた。だから影人は10本の内、2本だけ『破壊』の力を付与させた鎖を紛れ込ませておいたのだ。それを焦ったように見せかけ、2回目の鎖の攻撃で2竜にダメージを与える事に成功したのだった。

 とはいえ、影人がいま考えているようにゼルザディルムとロドルレイニが最初の計6本の鎖に無反応だったのは予想外だった。2竜は既に影人が竜の鱗を貫通させる事の出来る攻撃がある事を知っている。ゆえに最初の鎖に何らかの反応をし、結果『破壊』の力がない事を確認させ、油断した所に2回目の鎖の攻撃で確実に『破壊』の力を宿した攻撃を叩き込むという策のために、あえて攻撃を2回に分けたのだが、どうやら意味がなかったようだ。

(とはいえ、あくまでこれは俺がいったん体勢を立て直すための攻撃。本命の攻撃じゃない。流石にこれで多少の隙は出来た。この内に転移で一旦距離を稼いで――)

 影人は自分の後方に転移の渦を創造しようとした。ダメージを受けたショックで最低2秒ほどは時間を稼げると影人は踏んでいたからだ。その内に、影人はこの密接した空中の場から離れようとした。

「この程度でッ!」

「私たち竜族が怯むものかッ!」

 だが影人の予想に反し、ゼルザディルムとロドルレイニはダメージなどお構いなしに攻撃を続行してきた。

「なっ・・・・・・・!?」

 これには影人も読めなかった。普通、生物というのはダメージを受ければ何らかのアクションを取るものだが、ゼルザディルムとロドルレイニは自身のダメージに無視を決め込んだ。その事に影人は驚愕したのだ。

(ヤバい。今の俺は無防備だ。この攻撃は完全に喰らう! 幻影化を・・・・いやダメだ! あれは切り札だ。こんな所で使うわけにはいかない! ここで使ったら負ける! くそッ、仕方ねえ・・・・・・・!)

 幻影化は力を食いすぎる。影人も乱発は出来ない。ゆえに影人は腕を体の前で交差させて、防御の姿勢を取った。

 そして次の瞬間、影人を拳と蹴りの嵐が襲った。

「がっ・・・・・!?」

 まず1秒もしない内に両腕前腕の骨が砕けた。次に上腕の骨が殴り蹴られ、骨が砕け折れる。もちろん筋肉も甚大なダメージを受け、影人の意志に反し両腕がダラリと下がってしまった。これで、影人の両腕は一瞬にしてズタボロになり、影人は無防御ノーガードになってしまった。

 そこからは悲惨だった。竜の膂力を持つゼルザディルムとロドルレイニの拳打や蹴りが影人の全身を蹂躙した。全身から骨が砕ける音と筋肉や臓器が悲鳴を上げる音が聞こえる。影人は2秒ほどで、調理の下拵えがされた肉のように全身をズタボロにされた。

「・・・・・・・・・・」

 余りに一瞬の事なのでまだ明確な痛みは感じなかった。ただ影人は全身を指一つ動かせずに、声を上げる気力すら失っていた。

「む、まだ死んでおらんよな?」

「普通ならば死んでいますが、この者はまだ生きているでしょう。だから、地上に叩きつけますよ」

 ゼルザディルムとロドルレイニはそう言葉を交わすと、影人の体を思い切り下向けに蹴った。体を動かせなかった影人は、なす術もなく流星のように地面へと落とされた。

「がはっ・・・・・」

 地面に激突した衝撃で影人は自然と声を漏らす。遥か上空から落とされた衝撃で、影人の周囲の地面はクレーターのように凹んでいた。スプリガンの体が通常の人間形態よりは頑丈だったため、死にはしなかった。それでも尋常ではないダメージは更に受けたが。

「さて、夜の主の命令は出来るだけ殺さないようにとの事だったが・・・・・・・ちょいと止まれんな。これだけ心躍る戦いは本当に久しい」

「無論、ここで止まるという選択肢はありません。彼ならば、あの状態からでもまだ戦えると私は思っています。なので、今度はあなたが私に合わせなさい。ゼルザディルム」

「おお、やるか。了解したぞ、白竜の」

 背中に刺さった鎖を引き抜きながら、ゼルザディルムとロドルレイニは落ちた影人を見下した。鎖の鋲が刺さっていた箇所は『破壊』の力によって黒いヒビが広がっていたが、2竜が鋲を引き抜いた瞬間、傷は一瞬で修復され黒いヒビも消えた。

 ゼルザディルムとロドルレイニは大きく息を吸い込んだ。胸が膨れ上がっているように見えるのは、肺がそれだけ膨張しているからだ。

(ッ・・・・マ、マジかよ。あいつら、あの形態でも・・・・・・ヤバい、早くここから離れねえと・・・・・!)

 地から2竜を見上げていた影人は、2竜が何をするのか見当がついていた。影人はズタボロになった全身を闇の力で回復させて、すぐにこの場から離れようとした。でなければ、影人は消し炭になるか、凍って砕き死んでしまう。

 だがそれよりも早く、

「「ガァァァァァァァァァァァァァッ!」」

 ゼルザディルムとロドルレイニは、灼熱の吐息と極寒の吐息を空中から影人がいる地面に放った。

「ッ・・・・・・!?」

 次の瞬間、炎と氷の2つの死の吐息が影人を襲った。

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