第753話 約束された答え合わせ(1)
「・・・・・・・・・・・・・」
この世界のどこか。辺りが暗闇に包まれた場所。石の玉座に掛け、両目を閉じた1人の女がいた。長い白髪に西洋風の喪服を纏ったその女の顔は凍ったように美しかった。
(・・・・・・・ロンドンで5つ目のカケラを吸収して2週間。何か感じるものが出てきたな。今はまだ漠然としか分からないが、おそらくこれは・・・・・・・残りのカケラの気配)
レイゼロールがスッとそのアイスブルーの目を開けた。レイゼロールの見えない知覚には、大きな闇の気配が感知されている。ただ大きすぎてこの世界のどこにあるのかはまだ分からない。
(ふむ・・・・・・半数のカケラを吸収した事によって、知覚にも変化が生じたと考えるのが普通だな。カケラは元々我の力、それが結晶化したもの。ゆえにその存在を感じ取れる事は不思議ではないが、要因はそれだけではない気もする。あの忌々しい老神が、カケラに掛けた隠蔽の力も弱まっているかもしれん)
過去に自分の力の大半をカケラとして結晶化させ、それを10のカケラに砕いた神――長老と呼ばれる神はカケラに隠蔽の力を掛けていた。そのため、レイゼロールは最近に至るまでカケラを見つける事が出来なかった。
しかし、ここ最近になってカケラを見つけ出せるようになって来たのは、その力が弱まっている可能性が高い。でなければ、最近のカケラの集まり具合に説明がつかないからだ。
(・・・・・・・・もう少し時を置けばこの闇の気配の元の場所を特定できる気がする。それまでは、今まで通りエネルギー収集だけに焦点を絞るか。響斬からもたらされたカケラに関する噂の情報もあと数件は残っているが・・・・・・・・それはまだ様子見に止める)
もしも、この気配が自分が思っている通りカケラの気配でそれを回収出来たのならば、もう響斬の活動も意味を成さなくなる。その時は響斬をここに戻すか、レイゼロールがそんな事を考えている時だった。
レイゼロールの正面――その地面に周囲の暗闇と同化するように闇が生じ、突如としてそこからスッと1人の少女が飛び出るようにその姿を現した。
「こんにちは、と言っておくべきかしらね。レイゼロール」
「っ・・・・・・シェルディアか」
その少女の姿をしたモノの急に過ぎる出現に、レイゼロールは少しだけ驚いた。
「・・・・・・・・何の用だ。それとも何かの気まぐれにでも戻ったか?」
「どっちも、って所かしら。ああ、一応あなたに会ったから言っておくわ。5個目のカケラが見つかってよかったわね。おめでとう」
訝しむようにシェルディアにそう問うたレイゼロール。シェルディアはその問いかけに、軽く笑みを浮かべながらそう言った。
「・・・・・前に言ったはずだ。貴様からの祝福は恐怖でしかないとな。それよりも、はぐらかすなシェルディア。お前が我の前に姿を現した理由は何だ?」
「まあそう急かないでよ。まずは世間話でもしましょう。そうだ。新しく帰って来た子はいる?」
少し声を厳しいものにしながら再びそう質問したレイゼロールだったが、シェルディアはまた悠然と微笑むだけだった。そんなシェルディアを見たレイゼロールは、仕方なくそのペースに付き合う事にした。




