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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第746話 怪物の心(3)

「え・・・・・・・・・? い、いや俺はそんな事なにも聞いてませんよ? やっぱり何かの間違いじゃ――」

 影人は一瞬呆然とした。何だその面倒事押し付けましたみたいな言葉は。影人はそんな事は真夏から何一つ聞いていない。影人が首を横に振ってロゼの言葉を否定しようとすると、

「あ、悪い帰城。会長からお前にそんなこと言っといてくれって言われてたの忘れてたわ。いやー、最近疲れてたからなー」

 ガラガラと2年7組のドアが開けられ、そのクラスの担任教師である榊原紫織が顔を出してきた。ちょうど教室を出ようとした所で、教室の前で話していたロゼと影人の話が耳に入ったのだろう。紫織はへらりとした笑みを浮かべながら影人にそう言った。

「は? 先生、それマジっすか・・・・・・?」

「おう、マジマジ。そこのアドバイザーさんが言うように、お前の文化祭準備期間の仕事の優先度はアドバイザーさんの手伝いが最優先になって、それもこっちで認められてるから、普通に行ってこい。説明は後ですりゃ問題ないから。じゃ、手伝ってやれよー」

 紫織はそう言って廊下を歩いて行った。影人は紫織の後ろ姿を機械的に目で追うしかなかった。

(・・・・・ふ・・・・ふざけんなッ! 俺の人権はどうなってやがんだよ!? 意味がわからん! あの横暴会長・・・・・! 今回ばかりは流石に恨むぜ・・・・・!)

 正気を取り戻した影人は、片手で顔を覆いながら内心でそう叫んでいた。影人の脳内では高らかに笑う真夏の姿が容易に想像できる。流石に1発殴りたいと影人は思った。

「うん、なら問題はなさそうだね。帰城くん、そういう事だから手伝ってもらえるかな?」

「・・・・・・・・・・分かりましたよ、どうとでも使ってください」

 再度ロゼからそう頼まれた影人は、どこかヤケクソな感じでそう言った。













「つ、疲れた・・・・・・・」

 午後5時半過ぎ。風洛高校を出て帰路についた影人はそんな言葉を漏らした。結局ロゼの手伝いに同行させられた影人が解放されたのは、つい10分ほど前だ。最初は家庭科部の手伝いだけだと思っていたが、家庭科部を出た所でロゼは運動部の生徒たちに捕まり、更に影人の仕事は増えてしまった。重い荷物を運ばされたりと、モヤシの影人からすれば重労働であった。その後もロゼは色々な部活や生徒たちに引っ張りだこで、その手伝い係たる影人も多くの労働をさせられた。

「本当、ふざけた日だぜ・・・・・・こんなふざけた日がまだ続くとなると、イカレちまいそうになる。この世に救いはねえ・・・・」

 取り敢えず疲れた影人は、コンビニに寄って何か甘い物でも買って帰ろうと決めた。デザートかアイスか食わなければやってられない。オヤジのような思考回路をした前髪は、コンビニに寄り結局アイスとオレンジのゼリーを購入した。

「冷たいし甘いし美味え・・・・・・やっぱ夏のアイスは最高だな」

 シャクリと梨味の某アイスを齧った影人は、ほうと息を吐いた。この時期のアイスは帰り道に食べてしまわないと溶けてしまう。ゆえに影人はゼリーはまた夜に食べて、今はアイスを食べようと考えた。

「鳴ら◯い言葉をもう1度描いてー、赤◯に染まる時間を・・・・・・ん? あれは――」

 影人がアイスを食べ、歌を口ずさみながら歩いていると、前方に見覚えのある後ろ姿が映った。豪奢なゴシック服に黒い日傘。日傘から覗く緩いツインテールの髪はブロンド。間違いなく、自分のマンションの隣人だ。

「よう嬢ちゃん。どっかの帰りかい?」

「あら影人。私は散歩の帰りよ。そういうあなたも学校の帰りかしら?」

 影人は前方を歩く隣人に向かってそう呼びかけた。するとその隣人――シェルディアは振り返り、ニコリと笑った。

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