第742話 特別アドバイザー ロゼ・ピュルセ(5)
「いえ、こちらこそ! とてもいい刺激になりました! 当日、いらっしゃる事を心から楽しみにしています! 美術部一同、立って礼!」
「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」
眼鏡を掛けた男子生徒が部員にそう告げると、眼鏡を掛けた男子生徒含めた全員が、立ち上がり頭を下げてそう言った。やはり、影人が思っていた通り、あの眼鏡の男子生徒が美術部の部長だったようだ。
ロゼと影人は美術部の部員たちに再度感謝の言葉を述べると、美術室を後にした。
「――ふふん、どうだった『芸術家』。ウチの高校と生徒たちは」
「ああ、素晴らしかったよ。ありがとう真夏くん。君のおかげで、大変有意義な体験が出来た」
午後6時過ぎ。美術室を後にして3年の教室と複数の特殊教室を見学し、一応風洛西高校の全てを見学し終えたロゼと影人は、生徒会室に行き真夏にその事を報告した。生徒会室には真夏しかいなかったため、いま生徒会室にいるのは真夏、ロゼ、影人の3人だけだ。
「そうでしょうね、私に感謝しなさいよ。それと、帰城くんも本当にありがとうね。おかげで助かったわ。ほら、『芸術家』。あんたも帰城くんにちゃんとお礼言いなさいよ」
「もちろん感謝しているとも。ありがとう、帰城くん。君の案内がなければ、私はこれほど充足感を覚えていなかっただろう。改めて、君に感謝を」
「いえ、別に・・・・・・・俺は普通に学校を案内しただけですから。じゃあ、会長。俺はもう教室に戻っても大丈夫でしょうか?」
真夏とロゼから感謝の言葉を述べられた影人は、軽く首を振り真夏にそう聞いた。内心はやっと解放されると疲れに疲れていたが、その事は表情には出さない。
「ええ、大丈夫よ。じゃ、バイバイ帰城くん」
「では失礼します」
影人は真夏とロゼに頭を下げると、生徒会室を後にした。
「礼儀の正しい良い人物だね彼は。自分が主張し過ぎない範囲で私に説明し、私の好きなように見学させてくれた。気配り上手だ」
影人が去った方向を見ながら、ロゼが影人についてそんな評価を下した。ロゼの影人に対する評価を聞いた真夏は、軽く頷きこう言った。
「知ってるわ。じゃなきゃ、いくら私とあんたの知り合いだからって案内人にはしない。それより、『芸術家』。迷惑を承知であんたにお願いがあるんだけど、いいかしら?」
「君が私にお願い? もちろん、私の出来る範囲内であれば聞くよ。君には今日この学校を見学させてもらった借りがあるしね」
真夏からお願いがあると言われたロゼは、少し不思議そうな顔を浮かべながらもそう言葉を返した。




