第74話 対決、レイゼロール下(4)
「――彼は危険だ」
「まあ、そうですよねー」
一方、ラルバの神界のプライベート空間に飛ばされたスケアクロウは、ラルバとスプリガンのことについて話し合っていた。
ラルバもソレイユと同じように、スケアクロウの眼を通してスプリガンとレイゼロールの戦いを観察していたのだ。
その戦いを通して、ラルバがスプリガンに下した評価が今の言葉だった。
「ああ、それと転移してくれてありがとうございました。ぶっちゃけ、ヤバかったんですよ」
「それについては、俺が謝ることだよ。偶然とはいえ、君を巻き込むことない危険に巻き込んだんだから。本当にごめんよ、スケアクロウ」
「いえいえ、あなたが謝ることじゃないですから。にしても、あの人の強さは尋常じゃなかったっすよね。あれ、人間じゃないでしょう」
主神の前でも、スケアクロウは軽薄な態度を崩さない。ただ、言葉遣いは少し違うが。
「ああ、レイゼロールと対等にやり合う時点で普通じゃない。しかも、あのレイゼロールにあれだけのダメージを与えたんだ。危険という他ないよ」
戦いを見ていて、スプリガンについてわかったことはその尋常ではない戦闘能力だけだ。噂通りの闇の力に、圧倒的な身体能力。しかも依然、その目的も敵か味方かもわからない。
「彼の事については、全世界の光導姫と守護者に伝える必要があるな。今のところはスプリガンが出現した日本の守護者と、光導姫くらいしか彼の存在を伝えていないし」
「それがいいんじゃないですか?」
ラルバの言葉にスケアクロウは適当に相づちを打った。神のそこら辺の判断にかかしは興味がなかった。
「うん、またソレイユと話し合わなきゃな。っと、ごめんよスケアクロウ。君を地上に送らなきゃならないね」
「あざっす、ラルバ様」
ヘラヘラとした顔でぺこりと頭を下げるスケアクロウは、光に包まれていき、やがて完全にラルバの前から姿を消した。
「・・・・・・・スプリガン、奴はいったい何者なんだ?」
その根源的な謎にラルバは頭を悩ませた。
「・・・・・・・あの感覚は何だったんだ?」
自宅のベッドで影人はそんな言葉を漏らした。
とりあえず、あの場から逃げた影人は変身を解除して自分の部屋へと戻っていた。
つい先ほどまで、ソレイユと念話で話し合っていたのだが、詳しい話は後日、影人が神界に行ってすることになった。理由は、今日は影人が疲れているだろうからだそうだ。
「・・・・・・本当、今日は変な日だぜ。レイゼロールに斬られた肩の傷もいつの間にかなくなってるし」
実は、ソレイユの1番の心配事項はそれだったようなのだが、影人が気づいていたときには、もうすでに傷はなくなっていた。影人はまだ闇の力を回復に当てるような芸当はできないし、本当に謎だ。
(まさか、誰かが俺の体を使いやがった時に、闇の力で傷を直したのか? あの時の俺はどういうわけか言葉なしで力を使えてたし、身体の常時強化も出来てたからな・・・・・・)
全く分からない事だらけだ。本来ならもっと考えていたいが、強烈な眠気が影人を襲った。
(眠い・・・・・・今日は色々あったからな・・・・・)
気づけば、影人はすうすうと規則的な寝息を立てていた。それも仕方が無い。今日は色々な事がありすぎたのだから。
こうして影人の長い1日は終わった。




