第736話 案内人、帰城影人(4)
「ん、どうしたんだい?」
「あ、いえ・・・・・・別に何でもないです。じゃ、開けますね・・・・・」
ロゼに不思議な顔を浮かべられた影人は、仕方なく覚悟を決めると2年5組のドアを開けた。すると――
「「ばあ!」」
突如目の前に現れた白いお化けが2体、影人たちを驚かしてきた。
「っ・・・・・!」
「ほう!」
まさか、ドアを開けて驚かされると思っていなかった影人は、声には出さなかったものの内心ではけっこう驚いていた。ロゼは驚いてはいないようだったが、面白そうな表情を浮かべていた。
「ようこそ2年5組へ! ロゼさん、帰城くん!」
「はちゃめちゃに歓迎するわ」
目の前のお化けたち――実際には白いビニール袋を被った2人の生徒たちがビニール袋を脱いで、影人とロゼに歓迎の言葉を口にした。そして、影人たちに歓迎の言葉を述べたその2人の生徒は、影人がこのクラスに入る前に思い浮かべた少女たち――朝宮陽華と月下明夜だった。
「朝宮、月下・・・・・・・心臓に悪いからやめろ」
「やあ君たちか。歓迎ありがとう」
影人は2人の姿を確認すると、軽くため息を吐いた。ロゼも陽華と明夜とは昨日会っているので、その態度は少しフレンドリー気味だ。
「ささ、光司くんからの連絡で話は聞いてるからどうぞどうぞ!」
「ウチのクラスの出し物はミニお化け屋敷だから、ネタバレ的な要素はお見せできないけど、それ以外はご自由に」
陽華と明夜が影人とロゼを教室内へと誘う。どうやら、2人が影人とロゼが訪れる事を知っていたのは光司からの情報らしい。その情報から、ロゼに対するサプライズ的な意味を兼ねて、イタズラを準備していたのだろう。
「・・・・・悪い。ならちょっとの間、邪魔するぞ」
「失礼」
影人とロゼは陽華と明夜の言葉に甘え、2年5組へと入室した。すると、陽華と明夜と同じように5組の生徒たちが、「「「「「ようこそー!」」」」」と歓迎の言葉を述べてくれた。
(流石に今回ばかりは、朝宮と月下にぶっきらぼうな態度は取れねえな・・・・・・・・・)
今の影人は学校見学者であるロゼの案内をしている都合上、2人にいつものぶっきらぼうな態度を取れない。ゆえに、2人に対する態度はいつもよりは柔らかくせねばならない。
「いやー、でも昨日の今日でロゼさんとまた会えるとは思ってなかったですよ!」
「私たちの文化祭に興味を持ってくれたって、香乃宮くんからは聞いてます。よかったら、文化祭の当日はぜひ来てください。ウチの高校、部外者の方でも立ち入り可なんで。もし来てくださったら、全力で怖い思いさせますよ?」
「ふふっ、それは楽しみだ。恐怖は人間の原始的な感情の1つだからね。創作活動のいい刺激になりそうだ。当日はぜひお邪魔させていただくよ」
ロゼは陽華と明夜に文化祭を訪れる事を約束すると、教室内を見て回った。陽華と明夜が大道具や小道具の製作を紹介する。ロゼは2人の説明に頷きながら笑みを浮かべていた。




