第730話 押し掛け芸術家(3)
(そういや、ソレイユの奴は朝宮と月下が光導姫として歴代最高の潜在能力を秘めてるって言ってたな。俺があいつらを影から守ってる理由の1つもそれだし・・・・・・・・・・じゃ、ソレイユはあいつらがレイゼロールを救うって考えてるのか? 朝宮と月下がレイゼロールを救う・・・・・・はっ、なんだかな。今イチ想像できねえぜ)
ふと2人の姿を思い浮かべ、影人は口角を少し上げた。まあ、あの2人は漫画なんかでは間違いなく主人公属性という感じだが、現実はそう甘くはない。夏休みの間は研修で実力を上げたらしいが、それでも最上位の光導姫たちには及ばないだろう。陽華と明夜がレイゼロールを浄化し、救える可能性は限りなく低い。
「・・・・・・・あいつらがもしレイゼロールを浄化して救っちまったら、今世紀最大の番狂わせだぜ」
影人が肉声でそう呟いてリンゴジュースを飲み、さて教室に戻るかと立ち上がると、近くを通りかかった2人の男子生徒たちの話し声が聞こえてきた。
「聞いたか? なんか今、校門のところで面白い事が起きてるらしいぜ。何でも、部外者が入って来てるみたいで、先生方が対応してるんだと」
「あ、俺もさっき友達からメッセージ来て知ったわ。今は文化祭の準備期間で校門開いて、服もジャージとかの奴が多いから、入れるとでも思ったんじゃないのか? どうせその部外者、不審者のおっさんとかだろ」
「いや、どうも違うらしい。何でも綺麗な外国人の姉ちゃんらしいぜ。なんか水色と白の髪の。見に行った奴からの情報だと、モデルみたいですっげえ美人との事だ」
「マジかよ。ちょっと見に行ってみようぜ」
そんな会話をしながら、男子生徒たちは校門の方へと向かっていった。
「水色と白の髪の外国人・・・・・・? 何だか昨日見た気がするのは気のせい・・・・・・・・・・だよな?」
男子生徒たちの会話を図らずも盗み聞きしてしまった影人は、嫌な予感に襲われた。思い出されるのは昨日の昼に会ったあの人物の事だ。
「何か校門で面白いこと起こってるんだって! ちょっと行ってみよ!」
「有名人が来てるらしいよ! 何か芸術家の!」
「急げ急げ美術部! 理由は分からないがあの方が我が校に来ているらしいぞ! こんなチャンスを逃すな!」
影人がそんな予感に襲われている間にも、好奇心旺盛な高校生たちは続々と校門へと向かっていく。影人はその校門にいるという人物が、いま想像した人物であると半ば確信した。
「何であいつがウチの学校に来るんだよ・・・・・・・全く以て、意味がわからん・・・・・・」
影人は大きくため息を吐くと、一応自分の予想が正しいかどうか確かめるために、自分も校門へと向かったのだった。




