第722話 今、全ての真実を2(4)
「てめえのその考えは、別に普通だ。友達だったんだろ。なら、排除するよりは救いたい。それは当たり前だ」
けっと笑い飛ばすかのように、影人はソレイユを肯定した。別に優しさからとかではない。影人はただ自分が思った事を言っているだけだ。
「つーか、お前が自分をそう思ってること自体が、お前が優し過ぎる証拠なんだよ。本来なら、光導姫が死んだからって別にお前が背負い込む必要はねえんだよ。その動機が何であれ、自分で死ぬかもしれないって事を了承してあいつら光導姫は戦ってるんだ。てめえが光導姫たちの死に引け目を感じる理由はねえじゃねえか。少なくとも、俺なら何も感じない」
「なっ・・・・・・・・!?」
ソレイユは、影人のあまりにも冷た過ぎる言葉に絶句した。
「本気で言っているんですか影人!? そんな、そんな事を本気で!」
椅子から立ち上がりバンッとテーブルを両手で叩きながら、ソレイユは叫んだ。ソレイユが無意識にテーブルを叩いてしまったために、テーブルの上に置かれていた物が揺れる。影人の冷えた緑茶が入った湯飲みもその水面が揺れた。
「ああ、本気だぜ。俺は別に申し訳ないとかは思わない。いま言ったみたいに戦って死ぬリスクを飲み込んでんのはあいつらだ。それを決めたのは自分。そこに他人が感じる責任の余地なんか一切ない。全部死んだ自分の責任だ」
影人は冷めた口調で首を縦に振った。影人の言葉を聞いたソレイユは、影人のその考えにゾッとした。いや、影人の言うことが間違っているというわけではない。ただ、その考え方はあまりにも冷た過ぎた。
「私には、あなたが時々分からなくなりますよ・・・・・・・・・・」
「そりゃそうだろ。ある人物を全部理解するってのは、ほとんど不可能な事だからな」
ソレイユが不安げに漏らした言葉に影人はそう言葉を返すと、残っていた冷たい緑茶を飲み干し軽く息を吐いた。
「・・・・・・勘違いはするなよ。これはあくまで俺の意見であって、お前の考えを否定するものじゃない。俺の答えは最初に言ったものと変わらねえよ。俺はお前を非難しない。お前のその考えは、レイゼロールと親しかった奴としては当たり前だ。・・・・・ソレイユ、お前は死んでいった者たちの事を忘れてないだろ?」
「当たり前です! 彼女たちの事を1日たりとも忘れた事はありません!」
「なら、それでいいじゃねえか。優しいお前はそいつらの死を忘れずに、自分の業として背負ってる。そいつを理解してるなら、それだけでいい」
「え?」
「だから、それだけでいいんだよ。自分を必要以上に責めるな。自覚しているなら、なおさらだ」
驚いた表情のソレイユ。全く神のくせに自分の気持ちの整理の仕方が下手な奴だなと、影人はソレイユの顔を見て思った。




