第718話 今、全ての真実を1(5)
「・・・・・先ほども言いましたが、レイゼロールは兄の神に『死者復活の儀』を施そうとして、罰を受けました。その結果、レイゼロールは『終焉』の権能を失い、神としての大半の力も失った。ですが、レイゼロールはそれでもなお、『死者復活の儀』を諦めていませんでした。ですが、今度の『死者復活の儀』には問題が2つありました。1つは、復活させる対象が人間でなく神であるという点。人間を復活させるのと、神を復活させるのではわけが違います。神の復活には尋常ならざるエネルギー量が必要になるのです。それだけのエネルギー量は、神であるレイゼロールを以てしても持ち得ない。罰を受けた後の身ならば、なおさらです。2つ目の問題は、関わりの欠如。『死者復活の儀』には復活させる死者と関わりのあるものが必要です。人間を復活させようとした時には、レイゼロールは人間が身につけていた服の切れ端を遺物としましたが、兄の神との関わりのあるものは、もう失った後でした」
「ッ! そういう事か・・・・・」
ソレイユの長い説明を聞き、最後にソレイユが言った「もう失った後」という意味を理解した影人は、こう呟いた。
「レイゼロールはその関わりのあるものとして、『終焉』の力を使う気だったんだな・・・・・」
「ご明察です。儀式に必要なものは、決して物質でなくても構いません。その点でいえば、『終焉』の力は兄の神とレイゼロールしか有していない力。関わりがあるものとしては、最適だったといえます」
影人の言葉を正解とし、ソレイユは頷いた。
「レイゼロールはこの2つの問題をクリアするために、目標を定めました。まず1つは、自身のカケラの回収。全てのカケラを回収しない事には、儀式に必要な関わりである『終焉』の力も使えませんし、神としての力も半減しています。神としての力の半減は、そもそも儀式の失敗にも繋がります。ゆえに、レイゼロールはカケラを全て回収することを目標としました」
「・・・・・・・・それが今の目標でもあるわけだな」
「ええ。そして目標はまだあります。問題は2つ。レイゼロールが設定した目標も2つでなければ、解決できませんからね。残り1つの問題は、兄の神を復活させる莫大なエネルギーをどうするか。その答えとしてレイゼロールは、人の心のエネルギーに注目しました」
「心のエネルギー? どういう事だ?」
影人は首を傾げた。具体的に、心のエネルギーとは何ぞやと思ったからだ。
「人が強力な感情を抱く時などに発せられるエネルギーの事です。例えば光導姫は、強い正の感情を抱けば光の力が大なり小なりパワーアップします。それは人の心のエネルギーが生じるからです」
「ああ、それの事か」
影人は納得がいった。影人の場合は本質が闇なので、スプリガン時に強い負の感情を抱けば力が増大する。それは過去に何度かあった。
「レイゼロールはその本質が闇である、闇の女神です。レイゼロールの兄の神もその本質は闇でした。ゆえに、エネルギーとするなら正のエネルギーよりも負のエネルギーの方が都合がいい。そちらの方が親和性があるからです。そして、レイゼロールは思いつきます。人の負のエネルギーを収集する方法を。それこそが、人間の眷属落とし。つまり、人間の心の闇を暴走させ人が闇に堕ちる際の負のエネルギーを収集する。その結果、生まれるのが闇奴です」
そして、ソレイユはこう言葉を纏めた。
「レイゼロールは人を闇奴に変える際のエネルギーを貯蓄して、それを『死者復活の儀』のエネルギーにしようとしています。それが、レイゼロールが闇奴を生み出す理由です」




