第711話 とある女神の昔話(3)
「・・・・・・・・やっぱり、あれがレイゼロールの目的物か。って事は、釜臥山の時もそのカケラがあったんだな。だが、分からねえ事がある。今日、レイゼロールがカケラを吸収した瞬間、俺は何度か感じた事のある気配を感じた。凄まじい闇の力がレイゼロールを中心として世界に奔るような、そんな感覚だ。あれはいったい何なんだ? いやまあ、そもそもカケラって何だって疑問もあるが、今はそっちの方が気になるな」
影人はソレイユにそう質問した。影人が1番最初にその気配を感じたのは、冥と殺花戦の時だ。影人が陰から戦いを観察していると、凄まじい闇の力の気配を感じた。今思えば、あれはレイゼロールがカケラを初めて吸収した気配だったのだろう。影人にはまだ詳しく分からないが、レイゼロールがカケラを吸収する事とあの気配は連動している。それくらいは影人にも予想がついていた。
「あれはレイゼロールがカケラを吸収して力を取り戻した際の一種の現象のようなものです。あの力の波動を感じ取れる事が出来るのは、基本的には神と闇の力を扱う者だけです。あなたは闇の力を使いますし、イヴさんと契約して以降は力も拡張されたので感じ取れる事が出来るのでしょう」
「力を取り戻す・・・・・・? おい、その言い方だとまるで――」
「はい。あのカケラは元々レイゼロールのものです。いや、正確にはかつてのレイゼロールの力が結晶化したもの、という方が正しいですね」
影人が述べようとした言葉を、ソレイユが引き継ぐようにそう言葉に放った。
「あのカケラがレイゼロールの物・・・・・・じゃあ何で、レイゼロールは自分のカケラを探してるんだ? その背景が俺には全く分からねえ」
「もちろんそうだと思います。そのためには、カケラの背景、それと・・・・・・・・レイゼロールが何者であるのか、という点についても説明しなければならないでしょう」
「レイゼロールが何者であるのか・・・・・・?」
ソレイユの言葉を反芻するように影人はそう呟いた。確かに、影人はレイゼロールが何者であるのかを詳しく、いやほとんど知らない。影人がレイゼロールについて知っている事は、闇サイドのボス的存在。闇奴を生み出す者。そして、尋常ではない戦闘能力、全能に近い闇の力を有している事くらいだ。
「ええ、そうです。影人、1番最初にあなたがここに来た時、レイゼロールの事について私が陽華や明夜に言った事を覚えていますか? あの時、あなたはちょうどあの柱の裏にいて、私たちの話を聞いていましたよね」
ソレイユがこの円形状の広場ような場所の端にある柱の1つを指さした。ソレイユの指の示す先を見た影人は頷きながらこう言った。




