第705話 堕ちたる光導姫(2)
「それはそれとして・・・・・結局、あんたは何なのよ不審者男。同じ闇人かって疑ってたけど、見てた感じあんたはレイゼロールと敵対してる。でもあんたは守護者って感じじゃない。答えなさいよ、あんたはいったい何者?」
途切れた橋の向こう側にいる少女が、影人に向かってそう問いかけてきた。どうやら、レイゼロールたちとはまだ情報を共有できていないようだ。でなければ、そんな質問はしてこないだろう。
「・・・・・・・・・・俺の事はレイゼロールにでも聞いてみるといいぜ、失礼女。だが俺の名前だけは教えといてやる。・・・・・・スプリガン、それが俺の名だ」
少女から質問を受けた影人は、少女の事を失礼女と呼びながらいつも通りにそう答えを返した。何だか久しぶりに名乗った気がする。
「スプリガンね・・・・・・ふん、似合わない気取った名前ね。で、レイゼロール。自分の事はあんたに聞けって言われたけど?」
「・・・・・・・我も教えてもらいたいくらいだがな。我が知っている事はお前とあまり大差ない。奴の名前、闇人でもない奴が我らと同じ闇の力を扱う事、それくらいだ。正体不明・目的不明の怪人・・・・・それが奴だ」
「はあ? 何よそれ。それじゃこいつ、本当に不審者じゃない」
レイゼロールの言葉を聞いた少女が影人に対してそんな感想を漏らした。なぜだかその目は引いたような感じになっている。
(ふざけやがって。誰が本当に不審者だコラ。どっからどう見ても、誰とも群れない謎の一匹狼な男だろう・・・・・! チッ、これだから分かってない奴は・・・・・・・・)
少女のその言葉と態度に、影人はシリアスな場面だというのに内心キレていた。今の自分はミステリアスな怪人だ。断じて不審者ではない。
『いや影人。こんな時にふざけないでくださいよ・・・・・』
影人の怒りの言葉を聞いていたソレイユは、呆れたようにそう呟いた。この少年の事は本当に時たま分からなくなる。氷のような冷静さと針のような鋭さを見せる時もあれば、今のように超がつく緊張感漂う場だというのに、アホまっしぐらな一面も見せる事がある。おそらく、どちらも帰城影人という少年の偽らざる一面なのだろうが、ソレイユにはまだそういった面の理解が難しかった。
(ふざけてねえ。俺は本気で苛ついんだよ)
影人がソレイユにそう返答していると、メリーが真剣な顔つきでこう言葉を放った。
「あなたが闇人だと言うのなら、あなたも見逃すわけにいきませんわ。私には光導姫としての誇りと責任がありますから」
「光導姫としての誇りと責任ね・・・・・ふふっ、よく言うわね。自分が何のために、誰のために戦っているのかも知らないくせに。本当・・・・・・・滑稽だわ」
「っ・・・・・・・? あなたが何を言っているのか、私には正確には分かりませんが、光導姫の事をバカにしているのだけは分かりました。誇りを傷つけた責任は・・・・・・・・取ってもらいますわよ!」
メリーが左手の銃口をレイゼロールたちの方向に向けた。そして、メリーは銃を連射した。




