第704話 堕ちたる光導姫(1)
「なぜ貴様がここにいる・・・・・・?」
ソレイユから現れた少女が元光導姫だと告げられ影人が内心驚いていると、レイゼロールも少し驚いたようにそんな声を漏らした。
「あんたは確か・・・・・・・」
「・・・・・・・何でてめえがいるんだよ」
それはゾルダートと冥も同じだった。2人も少女の事は知っているようだったが、少女の出現に驚いているようだった。
「別にたまたまよ。私は元々ロンドンにいた。それからまあ色々とあって、あんたらの戦いを見てたってわけ。これでいいでしょ。これ以上は説明が面倒だし」
少女は全く気負った様子もなく、レイゼロールたちの問いにそう答えた。そして驚いているメリーの横を横切り、レイゼロールとゾルダートの方へと向かっていく。
「ちょ、ちょっと待ってくださいな! あなたはいったい何者なんですの・・・・・・!?」
メリーが呼び止めるように少女にそう問うた。先ほどメリーと言葉を交わした謎の少女。その少女がこの場に現れ、レイゼロールたちと知ったような間柄で話をしている。メリーには、少女がいったい何であるのか分からなかった。
「何者ね・・・・・・・・別に何者でもないわ。復讐者、と言いたいところだけど、私にそんな資格があるでもない。私はただ・・・・・闇に堕ちた者よ」
「「!?」」
少女はレイゼロールとゾルダートの近くで立ち止まり、メリーの問いに自虐するようにそう答えた。その答えに、影人とメリーは驚いたような表情を浮かべた。
無理もないだろう。少女が述べた「闇に堕ちた者」、その事が示す答えは――
(闇人・・・・・・こいつの正体は闇人だっていうのか・・・・・・・・!?)
そう。この場においてその事が示すのはそれしかない。光導姫やレイゼロール、闇人がいるこの場では。
だが影人が真に驚いたのはその箇所ではない。いや、少女が闇人だという事にももちろん驚いたが、影人が真に驚いたのは、この少女が元光導姫で現在は闇人だという事実だ。
『・・・・・・・・・・・・はい、そうです。彼女は元光導姫。そして今は・・・・・・最上位闇人の1人になってしまった者でもあります・・・・・』
影人がその事に気づいた事を察知したのを悟ったのだろう。ソレイユが重苦しいような口調でそう言った。
「・・・・・・・お前がこの場に現れた理由は理解した。お前が未だに招集に応じず、この都市にいた小言はまた後で言うとしよう。そして、この場に現れたという事は・・・・・戻るという事でいいんだな?」
「ええ、それでいいわ。正直、あそこまで戻るの面倒だから、ここに来たっていう側面もあるしね」
レイゼロールが少女にそう確認し、少女もそれを了承した。ここでいう戻るとは、レイゼロールたちの本拠地に帰るという意味合いだ。




