第700話 カケラ争奪戦イギリス9(2)
(なんだ? なんで急にレイゼロールの瞳の色が・・・・・・って、もう戻った・・・・・・?)
影人が内心で不思議そうにそう呟いていた瞬間に、レイゼロールの右の瞳の色はもう元に戻っていた。レイゼロールの瞳の色がアイスブルーから漆黒へと変化していた時間は、およそ2、3秒ほどだった。
『――影人、影人!』
影人がレイゼロールの瞳の事について考えていると、脳内に自分を呼ぶソレイユの声が響いた。
(! ソレイユか。俺に話しかけて来たって事はもう闇奴の方は大丈夫って事か?)
『はい。そちらはもう問題ありません。闇奴は全て浄化済みです。最上位闇人の1体と交戦した『守護者』に関しては重体ですが、何とか一命は取り留めました。それよりも影人、今の感覚からするに・・・・・』
(・・・・・・・・悪い。そういう事だ。レイゼロールは目的物を回収し吸収した。仕事は・・・・・失敗しちまった)
ソレイユの確認に影人は内心でそう謝罪の言葉を述べた。影人の報告を受けたソレイユは、『そうですか、やはり・・・・』と重苦しそうな言葉を漏らした。
『・・・・・・影人。この戦いが終わったら、あなたに伝えたい事があります。これからの事、それから・・・・・・・・・私があなたに隠していた全ての事を、あなたに教えます。だから、いつも通り絶対に戻って来てくださいね』
ソレイユは決然としたようにそう言った。ソレイユのその言葉に、影人は軽く笑ったようにこう言葉を返した。
(はっ、やめろよ。死亡フラグみてえじゃねえか。つーか、お前無理してねえか? 俺は別に、そういった情報をどうしても知りたがるような好奇心は持ち合わせちゃいないぜ?)
『いいえ、影人。あなたが前に私に言った、「来るべき時」が来たのです。レイゼロールが5つ目のカケラを吸収したこの時こそが・・・・・・リミットです』
(そうかい・・・・・・なら、今回も生き残ってお前から話を聞いてやるよ)
内心でそう言って、影人はソレイユとの念話を切った。そして影人は目の前のレイゼロールにこう言葉をかけた。
「・・・・・随分とご機嫌だな、レイゼロール。てめえの笑う顔は初めて見たぜ」
「・・・・・・・・スプリガン。そうか、当然ではあるがまだ貴様がいたな。丁度いい、見せてやろう。今の我の力を・・・・・!」
影人が掛けた言葉によって、再び影人に意識を向けたレイゼロールは影人を見てそう言葉を発した。
そして、その言葉を発し終えると同時にレイゼロールの姿が消えた。
「ッ・・・・・・!?」
いつもの超スピードではない。本当に忽然とレイゼロールは影人の目の前から姿を消したのだ。今の影人は眼を闇で強化している。レイゼロールが超スピードで動いていたならば、見失うはずがない。
(なんだいったい何が起こった!? 転移なら何か予兆が――)
「――今度は貴様が落ちろ」
影人が混乱していると、影人の後ろからそんな声が聞こえた。




