第699話 カケラ争奪戦イギリス9(1)
「・・・・・・これで5つ目。ようやく半分、または半分近くか・・・・・・・・・」
カケラを手に持ったレイゼロールはポツリとそう呟いた。レイゼロールには分かる。これは本物のカケラだ。なぜ時計の根元に埋まっていたのかはわからないが、今はそんな事はどうでもいい。大事なのはこれが本物のカケラであるという事だからだ。
「ッ! そいつがお前の目的物か・・・・・・悪いが――」
レイゼロールが持った黒いカケラを見た影人は、それがレイゼロールの目的物だと察知した。影人はそれを奪取するために、レイゼロールに再び近づこうとするが――
「・・・・・・・無駄だ。もう遅い」
レイゼロールはそう呟くと、右手に持っていたそのカケラを握って砕いた。砕かれたカケラは空中へと散らばる。
次の瞬間、砕かれたカケラは闇となってレイゼロールに吸収された。すると、レイゼロールから闇の波動のようなものが発せられた。
「ッ!?」
影人は思わずその場で静止した。なぜならば、その波動のようなものが発せられた瞬間に、影人をある感覚が襲ったからだ。
それは凄まじい闇の力の揺らぎ。それがここを中心として、世界に奔った感覚。影人が過去に何度か感じた事のある、あの感覚だった。
(やっぱりこの感覚は、レイゼロールが原因だったって事か・・・・・・・・!)
レイゼロールと何か関連がある感覚だとは影人も予想はしていた。しかし、その感覚がレイゼロールと関連があるという確かな証拠は何もなかった。
だが、やはりレイゼロールと先ほどの感覚とは関連があったのだ。その関連の証拠を影人はいま目撃したのだから。
(あのカケラをレイゼロールが砕いた瞬間、砕かれたカケラが闇となってレイゼロールに吸収された。その次の瞬間にあの感覚。つまり、レイゼロールはあれと同じカケラを今まで何度か吸収してたって事か・・・・・)
影人はレイゼロールをジッと見つめながらそう思考した。今まで分からなかった事に答えが与えられていく。レイゼロールの目的物はあの黒いカケラ。感覚との関連を考えるに、あのカケラは複数存在しており、少なくともレイゼロールはカケラを4個以上は吸収している。いや、夏休み最終日の感覚は他の感覚より大きかったので、もしかしたらもう少しカケラを吸収しているかもしれない。
「ふっ・・・・・力が戻って来る。なるほど、やはりこれでちょうど半分か。今ならその事が分かるぞ・・・・・・・・!」
レイゼロールは珍しく笑みを浮かべそんな事を呟いた。そして、レイゼロールは高揚したようにこう呟きを続けた。
「半数でこれ程に変わるか。ふふっ、ようやくだ数千年かかったがようやく半分・・・・・! あと半分のカケラと、必要な闇のエネルギーさえ貯め終えれば・・・・・・・・!」
「っ・・・・・?」
珍しく高揚しているレイゼロール。その呟きの意味も影人にはよくは分からないが、かなり重要なものだろう。だが、影人はそれよりもレイゼロールの右の瞳に疑問を覚えた。
レイゼロールの瞳の色はアイスブルー。しかし見間違いでなければ、レイゼロールの右の瞳の色はいつの間にか変化していた。
――真っ黒な漆黒の瞳へと。




