第695話 カケラ争奪戦イギリス8(2)
「・・・・・!」
残存していた骸骨兵を全滅させた黒フードの人物が、レイゼロールの方へと駆けてくる。レイゼロールは虚空から複数の黒い腕を呼び出し、それを黒フードの人物に放つが、黒フードの人物は先ほどの骸骨兵と同じようにその大鎌で黒い腕を全て引き裂いていく。
「・・・・・・・・・貴様のスペックは大体分かった。確かに貴様は、いや貴様の持つフェルフィズの大鎌は脅威だ。だが・・・・・貴様如きのスペックでは、我には勝てない。特に、近接戦ではな」
レイゼロールに接近してきた黒フードの人物が、レイゼロールに向かってその大鎌を振るってきた。ダメージを受ければレイゼロールとて一撃で殺される。だが、レイゼロールは微塵も動揺せずにそう呟くと、自身の体に闇の力を付与させた。
レイゼロールの体に闇が纏われ、そのアイスブルーの瞳に闇が揺らめく。身体能力の常態的強化と、眼の強化。だが、それだけではない。レイゼロールは更に自身の肉体に『加速』の力を付与していた。
レイゼロールの視界に映る光景が全てスローモーションになる。レイゼロールはゆっくりと振るわれる大鎌を回避すると、左腕の拳を黒フードの人物の腹部に見舞った。いわゆる腹パンというやつだ。
「ッ・・・・・!?」
「・・・・・・・・今の我と同等の近接戦を行う事が出来る者はほとんどいない。見くびるな、死神よ」
黒フードの人物の事を死神と仮称し、レイゼロールは冷たくそう言った。今のレイゼロールはカケラを4つ吸収している状態だ。レイゼロールはカケラを吸収するごとに力を増していく。いや、戻っていくという状態の方が正しいか。幻影化なども、カケラを吸収した事により使えるようになった技だ。
その状態のレイゼロールが、常態的な身体能力の強化、眼の強化、『加速』の力を使えば、レイゼロールと近接でまともに戦える相手は皆無に等しい。スプリガンとシェルディア。例外があるとすれば、この2者だけだ。恐らくこの2者だけが今のレイゼロールと同等の近接戦を演じられる。
「・・・・・・ふん」
レイゼロールは左拳を引くと、右足の蹴りを黒フードの人物に浴びせた。威力は調整した。この黒フードの人物には聞きたい事がある。だからまだ殺そうとはレイゼロールは思わなかった。フェルフィズの大鎌は、それ程までに無視できない存在だからだ。
「ッ・・・・・・・」
レイゼロールに蹴られた黒フードの人物は、路地を転がりながら地面に臥した。
「・・・・・まずはそのフードの下でも拝ませてもらおうか」
レイゼロールが拘束用の黒い腕を虚空から呼び出し、それらを再び黒フードの人物へと向かわせた。
「シッ・・・・・!」
しかし、黒フードの人物は無理矢理な感じで立ち上がると大鎌を振るい、黒い腕を全て切り落とす。そして、その袖口から何か玉のような物を取り出すと、それを地面に叩きつけた。
次の瞬間、その玉は弾け辺り一帯が濃霧に包まれた。




