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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第693話 カケラ争奪戦イギリス7(4)

「「「ギャオオオオオオオオオオオオッ!」」」

 影人に力を流し込まれた竜たちは、雄叫びを上げると黒腕を引きちぎり或いは噛みちぎった。そうして自由を得た竜たちは、主である影人の元へと戻って来る。

(確か・・・・こうだったな。まあ、水じゃくて氷だが大丈夫だろ)

 影人は落下しているレイゼロールを見下し狙いを定めると、3体の竜を融合させた。黒炎、黒氷、黒雷、融合したそれらの竜は、真黒な破滅の光へと姿を変えレイゼロールへと降り注いだ。

(ッ、キベリアの・・・・・・・! ちっ、これだけは受けてはまずい・・・・・!)

 上空から放たれた破滅の光を見たレイゼロールは、自身に幻影化の力を施した。転移では間に合わないと判断した結果だ。

 幻影化したレイゼロールは破滅の光に焼かれるも、陽炎のようにゆらめきその攻撃を無効化した。これで、レイゼロールの受けるダメージはゼロとなる。

 しかし、物質はそうはいかない。影人が放った破滅の光は、レイゼロールの直線上に位置していたウェストミンスター橋へと降り注ぐ。

 その結果、橋と橋の上にいた骸骨兵や闇のモノたちは、破滅の光に焼かれ塵と化した。もちろん、光の範囲内のだが。

(あ、ヤベェ・・・・・・・・・)

 地上を見下した影人は思わず内心そう呟いた。影人が放った破滅の光によって、ウェストミンスター橋の一部分が抉られ崩壊している。ちょうど、橋が途切れたような感じになってしまっているのだ。

(やっちまった・・・・・・ノリで撃って建造物のこと考えてなかった。アホか俺は・・・・・・・)

 損害賠償はいくらだ、と思わず庶民的な事を考えてしまう影人。しかし、影人はそんな事は今はどうでもいいと割り切り、橋の途切れている手前あたりに降り立った。まあ、スプリガンの力なら後で直せるだろう。

「・・・・・全く、やってくれるな」

「・・・・・・・・無傷のくせに何がだよ」

 陽炎のようにゆらめきながら、向こう岸の橋に現れ実体化したレイゼロールに影人は視線を向ける。黒翼はもう消えていた。あと、当然のように無傷なのは、なんだか少し腹が立つ影人であった。

(やっぱあの『幻影化』ってやつはチートだな。攻撃はできないが一種の無敵みたいなもんだし・・・・・だが、幻影化はその分バカに力を喰う技だ。レイゼロールの力の総量がどれくらいかは分からねえが、何十回も連発は出来ないはず。なら、ガス切れを狙うか?)

 影人はレイゼロールにどうダメージを与えるかを思考した。一応、影人の仕事はレイゼロールの妨害。又は釜臥山の時と同じならば、レイゼロールの目的物の奪取だ。つまり、レイゼロールを倒す必要も、ダメージを与える必要もない。

 だが、レイゼロールは手を抜ける相手では決してない。そういった相手に守りのスタンスや時間稼ぎのスタンスをするのは得策ではない(まあ場合によるが、今この時は違うという意味)攻めの姿勢を崩せば、レイゼロールはそれを見破り影人に更に積極的に攻撃してくるだろう。そうなれば、影人は後手に回らざるを得なくなる。最悪の場合は、回復や転移も間に合わずに一撃で殺される技なども放たれるかもしれない。

 一応、影人も幻影化は出来るので一撃必殺の攻撃を受けて死ぬという事はないが(影人は以前に仕事とは無関係に『幻影化』を試した。なので、幻影化の燃費の悪さも知っている)、燃費が悪すぎるので出来ればあまり使いたくはない。幻影化はそれくらいの奥の手なのだ。

 結局、影人が考えているのは自分の姿勢の問題だった。攻め続け、レイゼロールを倒すという姿勢。この姿勢を維持しなければ、影人の動きと思考には甘えが出て来る可能性があるからだ。甘えが出れば何をやらかすか分かったものではない。

「はっ・・・・・さあ、また地上戦と行こうぜ。さっきより足場は一部悪くなっちまったがな」

 影人がレイゼロールにそう言うと、まだ残っていた闇のモノたちが影人の周囲に集まって、対岸のレイゼロールに向かって威嚇し始めた。先ほどの影人の光による攻撃で骸骨兵や闇のモノたちは8割型は死滅したが、まだ残っているモノもいた。

「・・・・・抜かせ。言ったはずだ、貴様は邪魔だと。今の我に貴様と戦っている時間はない」

 レイゼロールが影人を忌々しげに睨みつける。そんなレイゼロールの周囲には骸骨兵が集まり始める。カタカタと骨と武器の音を鳴らしながら、影人の方にその虚な眼窩を向けてくる。

「――はっはははっ! やっぱ我慢出来ねえ! おい、レイゼロール! スプリガンの相手は俺が貰うぜェ! 代わりにあの黒フードはお前に任せる!」

「「ッ!?」」

 緊張が高まり、レイゼロールとスプリガンの次の攻防が始まると思われた時、突如としてそんな声が響き、ある人物がレイゼロールの後ろから飛んだ。冥だ。突然の冥の乱入に、影人とレイゼロールは一瞬驚いたような表情を浮かべる。

「そうら、スプリガン! こっからは俺とろうぜ! 嬉しいぜまたてめえと戦えるのはよ!」

 冥は崩壊した橋の箇所を跳躍しながら、心の底から嬉しそうなギラついた笑みを浮かべる。

「チッ、戦闘狂いが・・・・・!」

「ははっ、狂ってて悪いかよ!?」

 影人は注意を冥に向けバックステップで距離を取った。残っていた闇のモノたちが、冥を迎撃しようと攻撃体勢を取る。また遠距離の攻撃手段を有しているモノは、空中の冥に向かって触手や弓矢などで既に攻撃を開始した。

「雑魚どもが! 無駄なんだよ!」

 冥は硬化した体で弓矢や他の攻撃を全て弾き、自分に伸びてきた触手を逆に右手で掴むと、それを思い切り引き自身を加速させた。全力で引けば触手の本体の闇のモノが飛ぶので、あまり力は込めていない。固定させていなければ、加速はあまり生じないからだ。

 触手のおかげで影人のいる橋の方に近寄れた冥は、触手の本体の闇のモノを蹴り潰して着地した。その周りにいた闇のモノたちも、適当に殴り蹴り全滅させると、影人の方へと向かってきた。

「今度は俺が勝つぜ、スプリガン!」

闇纏体化あんてんたいげ。やるしかねえか・・・・・・・!」

 影人の体に闇が纏われる。先ほどの単発的な身体能力の強化の方ではなく、常態的な強化の方だ。冥レベルの闇人と近接戦をするなら、これは必須だ。

 スプリガンと冥の戦い。その第2戦目はロンドンの橋の上で始まった。

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