第69話 対決、レイゼロール中(3)
(まずい・・・・・・このままじゃ体力が保たねえ)
双剣でレイゼロールと近接戦を演じながら、影人は徐々に動きが鈍くなってきていることを自覚した。今はまだなんとか保っているが、この状態がこのまま続けば自分はいつかレイゼロールから致命的な一撃を貰うことになるだろう。
レイゼロールの体力がどれほどかは分からないが、動きは全く精彩を欠いていない。そろそろ勝負を決めに行かなければ、自分は負ける。
(だが、どうする? こうやって近接戦で奴の弱点や癖でも見つけられればとか、考えてたが、そんなものは見当たらない)
影人がレイゼロールに近接戦を挑んだ理由は、強襲をかけるためだったが、レイゼロールが近接戦闘も出来るとわかり、それでもこうやって剣を交えた戦闘を行っているのは、できるだけ近くでレイゼロールを観察するのも目的の1つだった。
だが、金の瞳の力を限界まで使ってもそんなものはなかった。むろん、影人が戦闘に関してずぶの素人ということもあって、戦闘のプロが影人と同じ瞳でレイゼロールを見れば、何か隙や弱点、癖を見つけられるかもしれない。
しかし、影人には見つけられなかった。というのが、現実だ。
そんな刹那の思考の間も、影人の体力は激しく消耗している。
そして遂には、レイゼロールの剣が影人の体を掠めた。
「ちっ・・・・・・!」
「どうした? 動きが鈍くなっているぞ」
外套を掠めた剣を振るいながら、レイゼロールは変わらず双剣による猛攻を続ける。レイゼロールが、わざわざそんなことを言ったのは、「お前の体力が長く保たないことは分かっている」とアピールするためだろう。
「性格の悪いやつだな・・・・・・!」
「・・・・・褒め言葉として受け取ってやろう」
一気に勝負を決めに来たのか、レイゼロールの剣閃がさらに速くなる。
(まだ速くなるのか・・・・!?)
さらに高速化したレイゼロールの動きを見極めるために、影人はさらに金の瞳を酷使する。
そしてその結果、影人は急激に体力を消耗していく。
「っ・・・・・・・・!?」
見る、ということはそれだけで体力を消費する。ましてや、影人のように集中して攻撃を食らわないように、眼を使いながら切り結んでいるならなおさらだ。
少しずつ、少しずつ、影人の体に捌ききれない、避けきれないダメージが与えられていく。
体から少量ではあるが、鮮血が飛び散っていく。
(ははっ・・・・・・・痛てえ。流石に敵の親玉はクソ強いな、俺の体力も、もうほとんどない。――なら、イチかバチかだ)
影人は全ての集中力を、次の攻防に賭けるべく、瞳に集中させた。




