第687話 カケラ争奪戦イギリス6(3)
「あんたは、いやあんたらか。あんたらは強かったぜ。ここまでヤバいと思ったのは初めてだ。一応、俺なりの称賛だ。まあ、クズからの称賛だがないよりかはマシだろ。こいつと種明かしを土産にして、あの世に逝けよ」
真面目な顔で最後にメリーにそんな言葉を送ったゾルダートは、メリーの首を最大限の力で絞めた。
「がっ・・・・・・・・ぁ・・・・ぁ・・・・・・・・」
メリーはもう限界で、口から泡を吹き始め白目をむいた。視界が徐々に暗くなっていく。
あと少しでメリーの命が尽きる。助けられる者は誰もいない。ここまでか。そう思われた時、
「か、彼女を・・・・・・離せッ・・・・!」
瀕死の守護者が翡翠色の瞳をゾルダートに向けながら立ち上がった。その瞳には怒りの色が燃えていた。
「あ・・・・・・・・・・? おいおい嘘だろ・・・・? 何でまだ立ち上がれるんだよ! 不死身かてめえは!?」
立ち上がったプロトを見たゾルダートは、呆然としたような顔でそう叫んだ。意味がわからない。いくら守護者といえども人間である事に変わりはない。だというのに、なぜその状態でまだ立ち上がりそんな目を向けてこられるのか。
「僕は・・・・・・・守護者だッ! な、何があっても・・・・・・光導姫を守る者だ・・・・!」
プロトは気迫だけで立ち上がりそう叫ぶと、自分の胸部に突き刺さっていたナイフの持ち手を右手で握った。
「ぐっ・・・・・・・うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
そして、プロトは痛みに耐えながらナイフを自分の胸部から引き抜いた。栓の役割をしていたナイフが引き抜かれた事により、傷口からはまた派手に血が噴き出す。しかしプロトはそんな事などは気にせずに、右手のナイフを持ってゾルダートに突撃してきた。
「クソッ! いったい何なんだよてめえは!?」
ゾルダートは仕方なくメリーの首から手を離した。ほとんど気を失いかけていたメリーは、ドサリと地面に倒れると「ゴホッゴホッ・・・・・!」と激しく咳き込み呼吸を開始した。メリーはまだ死んではいなかった。
「死に損ないがッ! いい加減に死ねよ!」
突撃して来たプロトに向かって、ゾルダートは右拳を放った。今のプロトがゾルダートの拳を避けられる道理はない。
「ッ・・・・・!」
事実、プロトはゾルダートの拳を左頬に受けた。だが、プロトはその拳を受けながらも突撃を止めなかった。
そしてその結果、プロトはゾルダートの胸の中央辺りにナイフを突き刺したのだった。
「がっ・・・・・!?」
油断したつもりはなかった。しかし、結果としてゾルダートはその心臓をナイフで貫かれた。




