第682話 カケラ争奪戦イギリス5(3)
「っ、プロト! あなたやっぱり傷が・・・・・・!」
「無理もねえ。普通ならそこまで動ける傷じゃねからな。あんたが異常に我慢強いかタフなだけで、常人なら失神しててもおかしくねえぜ」
脇腹を押さえたプロトに、メリーとゾルダートがそれぞれ言葉を掛ける。そう。普通ならゾルダートが言うように常人ならば痛みで気を失ってもおかしくない傷なのだ。しかし、プロトはそんな傷を受けてなお戦い気丈に振る舞ってきた。本来ならば、それは異常だ。
「大丈夫・・・・! それより、クアトルブ嬢。結局のところ、警戒すべきは武器だけだ」
プロトはメリーに何とか微笑みながらそう言った。プロトの言葉を聞いたメリーは、プロトがその事を理解している、という事を確認した。
「んじゃ・・・・・可哀想だから地獄に送ってやるよ。守護者サン!」
痺れを切らしたかのように、ゾルダートが突撃してくる。どうやら、標的は弱っているプロトのようで、プロトに向かってゾルダートは発砲してきた。
「くっ・・・・!」
プロトは弱体化している体で何とか銃弾を回避した。今のプロトの身体能力と怪我の状態では銃弾を避ける事すら困難なはずだが、プロトは冷静に弾道を予測して紙一重で反応したのだ。この辺りの冷静さは、さすがは守護者ランキング1位と言うべきか。
「そんな体でよく避けるなぁおい! でも、いい加減に鬱陶しいんだよッ!」
ゾルダートは左手のナイフを逆手に持ちながら、それをプロトの喉元に向かって振るった。プロトはその一撃に反応し、右手の片手剣でナイフを防ごうとしたが、その前にメリーが割り込んで来て、サーベルでナイフを防いだ。
「私もいますのよ? 忘れっぽい闇人ですわね!」
「忘れてねえよ。ただ、あんたはまだ元気そうだから後にしようと思っただけだ!」
睨み合いながらサーベルとナイフを合わせたメリーとゾルダート。2人はサーベルとナイフを数撃交わし合う。
「はっ、反応がぁ・・・・さっきより遅いぜ!?」
しかし傷がほとんど回復したゾルダートは、もうほぼほぼメリーによる弱体化の影響を受けていない。対して、メリーはまだ弱体化したままだ。更に、ゾルダートは逆境状態。この最上位同士の戦いにおいて、その反応の差はかなり大きなアドバンテージとなる。
その結果、ゾルダートはメリーの反応より速く、前蹴りをメリーの腹部に浴びせた。吹き飛ばし、体勢を崩す事が目的だったので、隠しナイフのスイッチは押さなかった。
「ぐっ・・・・!?」
ゾルダートの前蹴りをまともに受けたメリーは、腹部に激しい鈍痛を覚えながら、後方へと吹き飛ばされる。メリーの後ろにいたプロトも、吹き飛んだメリーに巻き込まれるように後方へと飛ばされた。その際、メリーの後ろにいたプロトはメリーを庇うようにメリーを抱き留め、吹き飛ばしによるダメージを何とか軽減させようとしていた。
「す、すみませんプロト。また、カバーしていただいて・・・・・・・・」
「いや、気にしないで・・・・それより来るよ・・・・!」
地面に転がったメリーはプロトに謝罪の言葉を述べるが、プロトは首を横に振り正面を見ながらそう言った。メリーはその言葉通り、正面に注意を払った。




