第676話 カケラ争奪戦イギリス4(1)
「はっ、ダメージを受けりゃ問答無用で死ぬ鎌か。一撃もらえば闇人の俺でも終わり・・・・・・・いいねえ、燃えてくるぜ!」
冥が面白いといった感じでそう呟くと、それに呼応するかのように冥に闇が纏わりついた。その闇はオーラとなって揺らめいた。分かりにくいが、レイゼロールの常態的な身体能力の強化とは違う。いや、能力としてはそれと同じでもあるのだが、これは冥の闇の性質『闘争』。その性質に依るある状態だ。
「『逆境状態』・・・・・・・・確かに一撃でも受ければ死という状況は、それが発動する十分なトリガーとなるか。ここに来る前に、ゾルダートにもくれてやっていたな」
「まあな。一応くれてやった。あいつの闇の性質はかなり使い勝手いいが、パクった能力のストックがないと意味ねえからな。今ごろあいつも俺と同じ状態にでもなってんじゃねえか? つーか、それ言うならお前もゾルダートになんか1つ能力くれてやっただろ」
レイゼロールがチラリと自分の横の冥に視線を向ける。冥は言葉をかけてきたレイゼロールに、適当にそう言った。正直、今はゾルダートの事はどうでもいい。
「それよか目の前の獲物だぜ。レイゼロール、お前あいつと1回戦った事あんだよな。あいつ、鎌以外に何か能力あるか?」
「・・・・・・能力はない。身体能力は光導姫や守護者クラスだ。よって警戒するのは『フェルフィズの大鎌』のみ。・・・・・・・・だが、前に使わなかっただけで、他に能力がないとも限らない」
冥の質問に、レイゼロールはそう答えを返す。目の前に突如として現れた死神のような人物。レイゼロールはその人物について分かっている限りの情報を冥に伝えた。
「ふーん、なるほどな。分かったぜ。んじゃまあ、戦るか!」
冥はレイゼロールから伝えられた情報に頷くと、早速黒フードの人物に向かって突撃した。
「・・・・・・・!」
自分に向かって突撃してきた冥に、黒フードの人物はその全てを殺す鎌を構え、自身も冥に向かって走り出した。
「そりゃ来るよな。てめえはその鎌で俺にダメージを与えりゃ勝ちだ。近接戦こそがてめえの最強の範囲。・・・・・だがな」
冥と黒フードの人物の差が徐々に縮まっていく。そして、黒フードの人物はその必殺の大鎌の範囲内に冥を捉えると、容赦なくその大鎌を振るった。
「超近距離戦なら、てめえの大鎌は何にも怖くねえんだよ!」
冥は大鎌を避けながら黒フードの人物に肉薄すると、右拳を黒フードの人物の腹部に当てた。
「ッ・・・・・・!?」
黒フードの人物は冥の一撃によろけるが、反撃しようと再び鎌を振るおうとした。
だが、
「バカが。この距離で満足にそんな長物振るえるかよ」
冥に鎌の柄を左手で押さえられ、黒フードの人物はフェルフィズの大鎌を振るえなかった。




