第668話 カケラ争奪戦イギリス2(3)
「はああ!? 誰が生意気なガキですの!? 私は一流の淑女でしてよッ! 失礼極まりない舌ですわね! その無礼な舌、風穴空けて斬り飛ばしてやりますわよ!?」
そしてメリーはゾルダートに挑発され、死ぬほど簡単に怒り狂った。煽り耐性ゼロである。
「ク、クアトルブ嬢落ち着いて。さすがに貴族でもあり名門クアトルブ家の御令嬢である君が、その言葉遣いはまずいよ・・・・・・」
今にもゾルダートに突撃して行きそうなメリーをプロトが宥める。プロトに自分がいったいどのような存在であるのか自覚させられたメリーは、ハッとした顔を浮かべた。
「そうですわ、私は名門貴族クアトルブ家の令嬢・・・・・・・・冷静さを欠くのはあるべき姿ではありませんわ。淑女の国際条約第25条。淑女は戦いの中でこそ冷静に。頭がカチ冷えましたわ」
メリーはふぅーと大きく息を吐くと、自身も剣と銃を構え、ゾルダートにこう宣言した。
「『淑女の舞い』。見せてあげますわ、私の高貴なる能力、そして私の実力を」
「おう見せてくれよ。俺の闇の性質はまあまあ地味でな。あんたが見せてくれなきゃ、動きようがないんだよ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お互いに刃物と銃を構えた光導姫と闇人の間に一瞬の静寂が訪れる。プロトは静かにメリーを見守る。彼女は宣言した。『淑女の舞い』を踊ると。ならば自分はしばらくは手出しはしない。メリーが危険に陥るまでは。でなければ、自分がメリーの邪魔になってしまう事をプロトは知っているからだ。
(存分に、クアトルブ嬢)
プロトが内心でそう呟いた瞬間、
「シッ・・・・・・・・!」
「ハッ・・・・・・・・!」
2つの迅雷が奔った。
まず仕掛けたのはメリーだった。メリーはゾルダートに接近しながら左手に持っていたフリントロック式の拳銃の引き金を引いた。それから続けて2回。メリーの持つフリントロック式の銃は、光導姫の武器だ。通常の銃とは違い、そこから発射される弾丸には浄化の力が宿り、弾数も光導姫の力を消費して作り出されていく形なので、光導姫の力が尽きない限りはその弾数は実質無限だ。
一方のゾルダートも、メリーの発砲に対して左手の拳銃の引き金を引いた。ゾルダートは1発だ。ゾルダートの拳銃は普通の実物の銃なのでしっかりと弾数がある。
ゾルダートはメリーの発射した3発の銃弾を最小限の動作で避けた。メリーはゾルダートの放った銃弾を右手のサーベルで弾いた。
接近した2人。刃物のリーチが長いメリーがゾルダートより先にサーベルを右袈裟に振るった。ゾルダートは右手のナイフでサーベルを弾き、軌道を変えさせた。




