第667話 カケラ争奪戦イギリス2(2)
「そらッ!」
ゾルダートはバックステップで距離を取りながら、腰のポーチから左手である物を取り出した。そして口でその物体のピンを抜くと、それを自分を追撃してこようとするメリーとプロトに投げた。
「なっ、手榴弾ですの!?」
「クアトルブ嬢、下がって!」
ゾルダートが投げた物体の正体を悟ったメリーがそう叫ぶ。その隣にいたプロトは、メリーを庇うようにメリーの前に立つ。そしてプロトは右手に持っていた片手剣を振るった。
プロトは片手剣を隼のような速度で振るい、ピンの取れた手榴弾を、片手剣の腹で上空へと弾き上げた。
それから1秒後、手榴弾は爆発した。先ほどの位置で爆発していたら、間違いなくメリーとプロトは大怪我をしていただろう。
「ありがとうございますわ、プロト」
「お礼の言葉はいらないよ。僕は守護者。守る者だからね」
メリーはプロトに感謝の言葉を述べた。プロトはそんなメリーに首を横に振り、軽い笑みを浮かべた。
「おおー、やるねえ。あの一瞬であの判断に、それを可能にする剣の技術力。あんたも色々と修羅場を潜ってるみたいだ」
ゾルダートは手榴弾に見事に対処したプロトにニヤニヤとした笑みを浮かべた。そしてゾルダートは左手をジャケットの内側に入れると、黒い拳銃を取り出す。右手にはナイフを持っているので、いわゆる銃と剣の形態だ。
「あなた、最上位闇人のくせに戦い方は人間そのものですわね・・・・・・体術も武器の扱いも一流なのは戦って分かりましたけど、闇人としてはそれ程でもないようですわね?」
メリーは馬鹿にしたような顔で、ゾルダートを挑発した。この闇人は強い。それは間違いない。メリーとプロトが2人で攻撃しても、この闇人には未だに傷一つつける事が出来ていない。とにかく戦いという行為自体が上手い。そんな感じだ。
(問題は、この闇人の能力が未だに何か分からないという事ですわ。早くこの闇人の能力を知らなければ、戦いが不利になる。この挑発に乗って、能力を使用してくれれば万々歳なのですけれど・・・・・・)
メリーが挑発した目的はそれだった。このままゾルダートが能力を秘匿すれば、メリーたちは常に分からない能力に警戒を強いられる事になる。そうなれば、色々と面倒な事になる。ゆえにメリーは、その面倒な事をなくすためゾルダートを挑発したのだ。
「くくっ、煽ってくれるじゃねえかお嬢さん。見た目の割にはけっこう口が達者だ。そういうあんたこそ、光導姫の割に今のところ能力を発動してねえが、あんた・・・・・・・・本当に光導姫か? もしかして、ただの生意気なガキだったりしてなぁ?」
しかし、ゾルダートは利口だった。ゾルダートはメリーの挑発に笑みを浮かべ、逆にメリーを煽って来た。




