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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第660話 芸術家ボンジュール3(5)

「よう暁理、お前も帰りか?」

「・・・・・・・・誰かな君は。悪いけど、僕の知り合いに君みたいな最低野朗はいないんだけど」

 影人が暁理に声を掛けると、暁理はツーンとした表情と口調で影人にそう反応した。

「今回は本当に長いなお前・・・・・・まあ、そろそろ機嫌なおせよ。帰りにコンビニで何か買ってやるからさ。美味いもん食えば、機嫌も直るだろ」

「はあ? 本気で言ってるのかい? 本気で言ってるんだとしたら、1回死んだ方がいいよ。それくらいに救えない奴だからさ」

 暁理にそう提案した影人だったが、暁理はなぜか更に機嫌が悪くなった。

「お前どんだけキレてんだよ・・・・・つーか、俺言ってただろ。どっかに行くのはあくまで気分が向いたらってよ。流石にそこまでキレられる筋合いはねえぞ?」

 影人は呆れたように顔を浮かべた。暁理が怒っている原因は前にファミレスで暁理と会った時に、影人が暁理と夏休みの間に2人でどこかに行くという計画を拒否したからである。しかし、その事については影人は予めそう断っていたはずだ。

「でも約束しただろ! 全く、君は分かってないよ! 僕がどれだけ楽しみにしてたか・・・・・! ふんッ! しばらくは絶対に許してやらないんだからな!」 

「あ、おい! ったく、本当に分からねえ奴だぜ・・・・・・・」

 暁理は感情的にそう吐き捨てると、足早に校門へと駆けて行った。影人は無理に暁理を追う事もせず、ガリガリと頭を掻きながらため息を吐いた。あんなに怒っている暁理はかなり珍しい。

「・・・・・まあ、面倒いからまだしばらく放っておくか。物で釣れないとなると、俺には他に解決方法も思いつかないしな」

 影人はそう結論づけると、自身も歩いて風洛高校の校門を潜った。帰りにコンビニで何か買って食おう。前髪野朗はそう考えた。よくもまあ、あんな事があったのにこんな呑気な事を考えられるものである。しかも救えない事に、この前髪の頭から暁理の事はもう締め出されていた。クズ野朗である。本当に1回死んだ方がいい。

「何食おう。唐揚げ棒もいいし、フランクフルトもいい。普通にチキンとか焼き鳥も捨てがたい。いや、肉まんっていうのも・・・・・・・・」

 影人がぶつぶつとそんな事を呟いていると、影人の脳内にイヴとは違う女性の声が響いた。

『影人! いきなりではありますが、行けますか!?』

「本当にいきなりだなおい・・・・・・・だがまあ行けるぜ。その焦り具合からするに、またレイゼロールか?」

 焦っているようなソレイユの声を聞いた影人は、近くに人がいないことを確認しながらソレイユにそう言葉を返した。

『はい、そうです! ですが、おそらくレイゼロールだけではありません。感度を最大限にすると、その近くに2つの巨大な闇の気配が感じられます。このクラスの気配は間違いなく・・・・・』

「最上位闇人か・・・・・・・釜臥山の時と同じ、足止め係用ってところか? クソ面倒くさいな・・・・・」

 ソレイユの言葉の続きを予想した影人が、言葉通り面倒くさそうにそう呟いた。何度も最上位闇人と戦った影人はよく知っている。奴らがどれだけ強く面倒な存在であるかを。何せ、その中の1人には1度殺されかけている。

「今回もレイゼロールの奴は何か探してんのかね。最上位闇人2体連れてるって事は、そういう事――」

 影人がそう言葉を続けようとすると、ソレイユが驚いたように影人にまたこんな情報を伝えて来た。

『ッ!? 待ってください影人! 新たな闇の気配が更に4つ出現しました! この気配は闇奴です!』

「はあ!? いったいどうなってんだよ・・・・・! とりあえず分かった。ソレイユ、俺をその場所へ送れ。レイゼロールの奴は今度はどこに現れやがった?」

 レイゼロール、最上位闇人2体、更に闇奴4体、その情報に少し混乱しながらも、影人はソレイユにそう聞いた。そして、その問いかけにソレイユはこう答えた。


「はい。レイゼロールたちが現れた場所は、イギリスの首都――ロンドンです!」

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