第657話 芸術家ボンジュール3(2)
「それにしても・・・・・・・君たちは美しくも興味深い本質を持っているね」
ロゼは唐突にそう言うと、まずは陽華をジッと見てこんな感想を述べた。
「君は太陽のように明るい、全てを元気づける優しさを持っている少女のようだ。自分を顧みず他者を助けられる人間。キラキラと輝く美しい光が君の中には見れるよ」
「え? あ、ありがとうございます!」
ロゼにそう言われた陽華は、何が何だか分からなさそうな顔を浮かべながらもお礼の言葉を口にした。
「君は月のように沁みる優しさを持った少女。君の優しさは一見すると分かりにくいかもしれないが、君のその優しさに救われている人々は大勢いるだろう。君の中にも、彼女と同じキラキラとした光が見て取れる」
「恐悦至極、ですぜ」
陽華に続き、ロゼにそんな人物評価を下された明夜は笑みを浮かべそう言葉を返した。相変わらず表情と言葉が一致していない。
「さて、お次は君だムッシュ。君は真っ直ぐとした芯のある人間だね。自分が正しくあろうと努力しているタイプかな。しかし、少し失礼な事を言わせてもらうといささか真っ直ぐすぎる。君の心は強いが弱くもある。だが、それも人間という生物の魅力の1つだと私は思うよ」
「・・・・・・・ご忠言、ありがとうございます」
明夜から光司に視線を移したロゼは、光司にはそんな言葉を送った。陽華と明夜とは違い、少々毛色の違う事を言われた光司は、少し反応に困りながらもそう呟いた。
「そして最後は君だ、前髪が素敵な少年。君の本質は・・・・・・・・中々見えないな。薄い霧のようなものがかかっていて見えにくい。俗に言うミステリアスな人物だね君は。いやはや、私の観察眼もまだまだだね。もっと鍛えたないと。正直この中だと外見の事も踏まえて1番君に興味が惹かれるよ」
「・・・・・・・俺にはあなたが言っている事はよく分かりません。ですが、これだけは言えます。俺はあなたのような人が興味を抱く人間ではないですよ」
ジロジロと好奇心を隠さない目で自分を見てくるロゼに、影人は冷めたような言葉を送った。ロゼからこの目を向けられるのは2回目だが、影人はロゼのその目が嫌いだった。自分に興味を抱き知りたがる目。ズケズケと影人の中を見ようとするその目は正直言ってしまえば不快だ。
「・・・・・・ではすいません。俺はこれで失礼します。学校に戻らないといけないので。著名な芸術家の方と会えて良かったです。それじゃあ良い旅を」
影人は最後にロゼにそう言葉を告げると、その場から歩き始めた。そんな影人にロゼは、「ありがとう」と言って微笑んだ。




