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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第651話 芸術家ボンジュール2(1)

「そーらお前ら、今日も文化祭の出し物の準備すんぞー。テキパキ働けー」

 キーンコーンカーンコーンと午後の授業の開始を告げるチャイムが鳴る中、2年7組担任教師である榊原紫織は、やる気のなさそうな声で生徒たちに向かってそう言った。紫織の言葉を受けた2年7組の生徒たちは、自分の座っていた机と椅子を押し、教室の前方へと集めていった。

 9月6日木曜日。数日ほど前から風洛高校は文化祭準備期間へと突入した。それに伴い、午後の授業は全て各クラスの出し物の製作に差し替えられる事になった。

「だるい・・・・・・これならまだ普通の授業の方がましだぜ・・・・・・・・・」

 そんな生徒たちの中に、前髪が異様に長い少年がいた。我らが前髪野郎、帰城影人である。影人は他のクラスメイトたちと同じように、机と椅子を教室の前方に押しながら面倒くさそうにボソリとそう呟いた。

「今日は確か・・・・・造花と他の飾りの作成の続きだったな。ったく、文化祭の準備ってやつはやっぱり嫌いだ・・・・・」

 ぶつぶつと文句を呟きながら、影人は教室の後方に乱雑に置かれていた造花や他の飾り付けを作成するための紙やテープを取る。チラリと周囲を見てみると、他のクラスメイトたちも看板の作成や衣装の作成に取り掛かっていた。

 1週間ほど前に行われたホームルームで様々な議論の末、多数決で決まったのはいわゆるクラス喫茶というものであった。軽食と飲み物を提供し、教室の内装をカフェ風にするという、文化祭などではありきたりな出し物だ。

 ただ、それでは何の面白みもない。最初は文化祭の出し物を決めるときに、これまたベタであるが男子側からメイド喫茶という意見が出された。しかし、それでは接客をするのが基本的に女子に限定される。まあ別に、男子がメイド服を着てはいけないという事はないのだが、そうなってしまえば高確率で地獄のような光景が広がる可能性がある。そこで男子と女子による議論の末、2年7組の出し物は「コスプレ喫茶」という事に決定した。

 これは、クラス全員が必ず何らかの仮装やそれらしい服装をしてクラス喫茶をやるというもので、各個人は文化祭当日までにその衣装を用意しなければいけない。それは当日家庭科室にこもって料理番をする者などもだ。例外はない。つまり、影人も文化祭当日は何らかの仮装や衣装を着なければならない。

(なーにがコスプレ喫茶だ。何の捻りもありゃしねえ。おまけにクソ面倒くさい事に衣装も用意しなきゃならねえし・・・・・・・はあ、文化祭当日に学校にカッパが現れてブレイクダンスでもしねえかな。頭の皿割れて死にそうになりながら)

 影人はしょうもない事を考えながら造花を作成していく。文化祭準備期間の影人の係は小道具製作で、文化祭当日は教室のオーダーを家庭科室に届ける係だ。まだ1番楽そうな係を影人は選択した。

 ちなみに影人はいま教室の隅で1人で小道具の製作をしている。他の小道具係の面々は固まって製作しているのに、影人は1人だ。別にこれは影人がハブられているとかではない。むしろ、どちらかと言えば問題は影人にある。

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