第65話 対決、レイゼロール上(2)
「――造兵」
先に仕掛けたのはレイゼロールだった。
レイゼロールが手を軽く振るうと、地面から闇で作られた骸骨兵が数体出現した。
槍や剣を携えた造兵たちは、ケタケタと歯を鳴らしながら影人に襲いかかる。
「闇よ、拳銃と化せ」
影人はフェリート戦で使用した2丁拳銃を闇で拵えると、闇色の弾丸を骸骨兵に掃射した。
弾丸を受けながらも、こちらに向かってくる造兵たちに舌打ちをしながら、影人は最初に向かってきた造兵に蹴りをお見舞いする。
身体能力が強化された蹴りにより造兵は吹き飛ばされる。
造兵の槍による突き、剣による斬撃を避けながら、影人は至近距離で拳銃の引き金を引く。弾切れのない拳銃の弾丸を至近距離から浴びせられた造兵たちは闇で出来た骨を砕かれ地に伏せていく。
「形状変化、日本刀」
影人は右の拳銃を日本刀に変化させると、1直線にレイゼロールめがけて地面を蹴った。
「ふん・・・・・・・」
レイゼロールが、再び手を真横に振るうとさらに闇色の骸骨兵たちが召喚される。
先ほどと同じように影人に襲いかかってくる造兵を影人は、左の拳銃で、右の日本刀で対応する。
まず向かってきた造兵に日本刀を真一文字に振るう。この闇で作った日本刀も質量はあるため、普段の影人が持てばかなり重いだろうが、スプリガン状態の影人ならば片手で振るうことも可能だ。
その一撃で造兵の頭と胴体をお別れさせる。左から襲ってきた造兵に対しては、2、3発ほど引き金を引いて、無効化する。
「ちっ、闇の鎖よ」
流石に捌くのが面倒になってきたので、虚空から鋲付きの鎖を召喚する。
鎖は造兵たちに巻きつき、鋲はコンクリートの地面を突き破り地中深くに固定される。これで造兵はその場を動くことができなくなった。
「一騎討ちといくか、レイゼロール」
「抜かせ、小童」
影人が銃と剣の装備で、レイゼロールとの距離を詰めようとする。
しかし、
レイゼロールの背後の虚空から無数に伸びる腕のようなものが、それを阻止しようと影人に襲いかかる。
「造兵」
パチンとレイゼロールが指を鳴らせば、さらに無数の造兵たちが召喚される。ケタケタと影人を嘲笑うかのように音を立てながら、造兵たちは各々の武器を構える。
「っ!? 形状変化、双剣!」
伸びてきた腕に対応するため、日本刀と銃を軽く小回りのきく双剣に変化させる。
さらに造兵たちに対応するため虚空から伸びる鋲付きの鎖の数を増やした。
「――シッ!」
短く息を吐き、影人は自分に迫る腕を両手の双剣で切り裂いていく。
造兵は鎖をある程度オート操作にして対応。自分は無数に伸びてくる腕をただただ斬って斬って斬りまくる。
(落ち着け、冷静にやれば対応できるはずだ)
力の使い方も、変身時の体のスペックも自分は知識として知っている。冷静に対応すればこの程度の攻撃なら凌げる。
(俺の勝利条件は、あいつらを逃すこと。その方法は考えてある)
この結界が現れた時、ソレイユはこの結界がどういうものなのか自分の目を通して解析したと言っていた。
その結果によれば、この結界は内側からの破壊は不可能。この結界内では転移が不可能。それがこの結界の効果だとソレイユは言っていた。
だからあの4人をこの結界内から出すか、この結界を完全に壊せば、あの4人は転移が可能になる。
(今のところ、レイゼロールはあいつらをどうこうしようとは思っていない。それは幸いだな)
結界と影人の壁の間に閉じ込められた4人をチラリと見て、そう考える。その思考の間にも影人は闇で出来た腕を次々と切り裂いていく。
(一瞬の隙でいい。それさえ作れれば、俺の勝利条件は満たせる)
勝つ必要はない。いま自分がするのは負けないように立ち回り、攻撃するという姿勢を見せること。
しかし、この状況はそれ以前の問題だ。レイゼロールから隙を作るためには、近接しかない。影人はそう考えていてた。
「・・・・・・ままならねえな」
強引なやり方で博打の要素はあるが、レイゼロールの一方的攻撃という状況を打破するため、影人は全ての鎖を腕の対応に当てた。




