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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第64話 対決、レイゼロール上(1)

派手な音を響かせて、結界は破られた。

 結界の頂点部が破られたことにより、月光が結界内に降り注ぐ。

 そして月光と共にその乱入者は現れた。

「「「「!?」」」」

 覚悟を決めてレイゼロールと戦おうとしていた4人は、突然の乱入者に驚きの表情を浮かべる。

「・・・・・・・・やはり現れたか」

 だが、レイゼロールだけはこの事態を予測していたのかそんな言葉を呟いただけだった。

 鍔の長い帽子に黒い外套をはためかせ、スプリガンは着地するための言葉を紡ぐ。

「――闇よ、俺を受け止めろ」

 その言葉の通り、影人の着地点になるであろう場所に闇が渦巻く。闇は弾力性のある固形となり、影人を受け止めた。

 勢いを殺したため、何のダメージを負わずに影人は着地に成功する。影人が着地した場所はちょうど、レイゼロールとアカツキ、陽華、明夜、スケアクロウの中間地点であった。

「スプリガン・・・・・・!」

 その名を呼ぶのがまるで彼女の役目かのように陽華が言葉を発する。

 やはり、やはり生きていた。フェリートとの戦い以来姿を確認できていなかったスプリガンを見て、陽華は心のどこかにあった不安が霧散していくのを感じた。

「・・・・・やっぱり無事だったのね」

 そしてそれは明夜も同じだった。フェリートとの戦いで明夜はあわやというところをスプリガンに助けられた。そんな恩人が無事だと分かったのは、やはり嬉しい。

「・・・・・・へえー、彼が」

 初めてスプリガンに遭遇したアカツキは、レイゼロールの警戒をしつつも興味深そうにスプリガンを眺める。いつか出会ってみたいと言ったが、まさかこんなに速く件の人物に出会えるとは思っていなかった。

「・・・・・・・・・」

 ただ、かかしだけはジッとスプリガンを見つめるだけだった。最初こそ他の3人と同じく驚いていたかかしだったが、すぐに冷静さを取り戻すと、いつもの軽薄さはどこへやら、観察者の目でスプリガンに注視していた。

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 お互いに言葉を発さず、スプリガンとレイゼロールは視線を交わす。

 スプリガンは金の瞳、レイゼロールはその凍えるようなアイスブルーの瞳を。

「・・・・・・・スプリガン、今1度問おう。お前は何者だ?」

 先に言葉を発したのはレイゼロールだった。その言葉は前にレイゼロールが影人にしたものと全く同じものだった。

「・・・・・・言ったはずだぜ、スプリガンだってな」

 その問いに影人は前と同じくそう答えた。自分の、スプリガンの情報はむやみに与えない。それは自分が徹底しなければいけない点だからだ。

「・・・・・・・話す気はないか。では――お前を殺す」

「・・・・・・・やれるものならやってみろ」

 唐突な殺人宣言に影人は不敵な笑みを浮かべた。

「――が、その前にだ」

 影人は後方にいる4人の方に右手だけを向けた。

「拒絶の壁よ、そそり立て」

 頭の中でイメージし、言葉に出すことで闇に形を与える。影人がそう呟いた直後、影人と4人の間に巨大な闇の壁が作られた。

これで影人と4人は隔てられた。

「っ!? スプリガン!?」

 陽華がどういうことかと壁を叩く。スプリガンが作った壁はレイゼロールの結界と同じく、少しぼやけるが向こう側が見えるタイプのものなので、スプリガンやレイゼロールの姿は確認できた。

「うーん、この壁も結界と同じで破るのは難しそうだね。といっても、この結界も彼が破った頂点部だけしか壊れてないし、はてさてどうしたものかな」

 アカツキは先輩の光導姫らしく、冷静に自分たちの置かれた状況を再度確認する。この状況では慌てるだけ無駄というものだ。

「・・・・・・私たちは邪魔ってことね」

 明夜にはスプリガンの目的が分からない。しかし、彼は過去2回と同じように自分たちが危険な時に助けてくれた。そして今回もそうだ。

 だが、スプリガンは誰も信じてはいないのだろう。その証拠がこの壁だ。

 明夜はスプリガンがそう思っていることが悲しくもあるし、また助けられる自分の力不足にどうしようもない怒りを覚えた。

「・・・・・・確かにこりゃ闇の力だな」

 かかしはスプリガンの作った壁に触れ、スプリガンが闇の力を使うという噂を確認した。そして、確認し終えると視線をスプリガンの背中に向けた。

(見せてもらうぜ、あんたの実力ってやつを)

 スケアクロウは心の中でそう呟き、事態の経過を観察した。

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