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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第637話 カケラ2つ、休暇の終わり(3)

「おう冥じゃねえか。今しがた帰って来たところだ。戦いに関して言うなら、10日くらい前に中東でドンパチしてきたぜ。つーか正面切ってクズ野郎はひでえな。これでも表向きは誠実で通してんだ」

「お前のどこが誠実だ。ドブみてえな、吐き気催すレベルの邪悪さ持ってるってのに。更にタチ悪い事に、お前自分の事どうしようもないクズだって自覚してんじゃねえか」

「けけっ、まあな。自分で言うのもなんだが、俺はロクな死に方しねえよ」

 冥の痛烈な言葉にゾルダートは笑い声を上げる。2人のやり取りからも分かる通り、冥とゾルダートは「十闇」の中では馬が合う方だ。それは2人の()()()()が原因だが、その気質の事を差し引いても2人はお互いの事をある程度気に入っていた。

「そこはどうしようもないくらいに同意するぜ。なあ、ゾルダート。お前いま暇だろ? ちょっくら俺とろう。お前は戦いに関しちゃ鈍ってないだろうしよ」

 冥は無邪気な笑みを浮かべてゾルダートにそう言った。冥の目はどこかウズウズとしたような、ワクワクとしたような色を放っていた。そしてその目の奥には、闘争を求める修羅の陰りが見える。それは典型的な戦闘狂の目であった。

「お前の気持ちは分かるが今は無理だ。俺はまだ力を封印されてる状態だからな。今のお前とやってもそもそも戦いにすらならねえよ」

 ゾルダートは首を横に振りそう言葉を返した。その目はかなり残念そうな色を浮かべていた。

 そう、冥とゾルダートに共通する気質、それは2人とも戦いが大好きな戦闘狂という気質であった。そういった気質であるからこそ、ゾルダートはこの100年ほどの間も、傭兵という仕事を変わらずにやり続けてきたのだ。

「響斬も最初はそう言ってたぜ。ったく、レイゼロールの奴いっつもタイミングが悪い奴だよな。わかった、んじゃ手加減すっからさ。とりあえず戦ろうぜ」

 ゾルダートから戦いを拒否された冥は、それでも食い下がるようにそう言ってきた。途中、冥がレイゼロールの事を呼び捨てにした辺りで、殺花がギロリとした目を冥に向け殺気を放っていたが、殺花から殺気を向けられる事に馴れていた冥はそれを無視した。

「それでもダメだ。せっかく久しぶりに戦るなら、お互い全力を出せる方が楽しいし気持ちいいだろ? だから、今は堪えろよ」

 しかし、食い下がってきた冥に対してゾルダートは再び首を横に振った。その口調はどこか諭すようなものだ。冥と同じ戦闘狂であるゾルダートには、冥の気持ちがよく分かる。だが、お互いに全力を出せない状態で戦ってもつまらないだけだ。ゾルダートにはその事が容易に予想できた。

「チッ、確かにお前の言う通りかもな。わーったよ、今はやめとく。俺は地下に戻ってまた修練してらあ」

 冥はゾルダートの言葉に不承不承といった感じで納得すると、そう言い残してまた暗闇の中へと姿を消していった。

「さてと、なら俺は部屋に戻って着替えるかな・・・・・・・・あ、殺花さんもありがとよ。色々と教えてくれて。とりあえず、レイゼロール様(ミストレス)が戻るまでは俺は部屋でゆっくりしてるわ」

「了解した。では自分はこれで失礼する、ゾルダート殿」

 殺花はそう言葉を述べると、スゥと暗闇に溶けていった。そして、それに伴って殺花の気配も完全に消えた。

「くくっ、戻って来たって感じだな。やっぱり、ここにいて退屈はあんまりしなさそうだ」

 1人になったゾルダートは笑みを浮かべそう呟くと、自身も暗闇の中へと消えて行った。

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