表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
609/2051

第609話 近くにいても知らぬ事(3)

 影人は昨日ソニアの見送りの最中に、自分が抱えている疑問――本当に自分の妹である穂乃影が光導姫であるのかという疑問を、自分の目で直接確かめる事を決意した。ソレイユに聞く前にまずは自分の目で、それが影人が決めたことだ。

 そのための方法として、影人は穂乃影の後をつけるという方法を取ると決めていた。穂乃影は不定期のバイトをしている。穂乃影が本当に光導姫かどうか、その時に後をつければ全てわかるはずだ。

 そして、その方法を取るためには、穂乃影の近くに常にいる必要がある。現在、穂乃影は家にいる。なので、影人も出来るだけ家にいる必要があるのだ。

「・・・・・・・・9割は思い違いだと思うが、世の中は残り1割の確率も普通にあり得るからな。せっかく金髪から言葉もらったんだ。せいぜい、足がすくみそうになってもやり抜いてやるさ」

 夏の暑い風を全身で感じながら、影人は自宅へ向かって自転車のペダルを漕ぎ続けた。












「たでーま、だ」

 自分の家に戻って来た影人は、リビングに続くドアを開けると、帰宅の挨拶を口に出した。リビングのドアを開けた途端、涼しい空気が影人を出迎える。やはりクーラーは夏において最強だと実感する。

「おかえり・・・・・帰ってくるの、えらく早いね。友達に呼ばれたんじゃなかったの?」

「呼ばれたがしょもない話だったから、バックれて来たところだ。たぶん後で怒りの電話が掛かって来ると思うぜ」

 リビングのイスに腰掛けてノートと教科書を広げていた穂乃影が、帰って来た影人にチラリと視線を向けそう聞いて来た。妹の問いかけに、影人は端的にそう答えると、台所で手を洗う。

「バックれたって・・・・・・そんな事してたら、あなたと友達になってくれてる貴重な天然記念物さんが可哀想。急いで戻って土下座してくるべき」

「おい、妹よ。お前は普段どんな目で俺の事を見てるんだ・・・・・・・・?」

 無表情で平然とそんな事を言ってくる穂乃影に、影人は悲しい気持ちを抱きそう言葉を返す。穂乃影の言葉には、兄に対する敬いの気持ちなどカケラも存在しなかった。

「変人。それ以外に言葉が思いつかない」

 穂乃影は視線を教科書とノートに戻し、ペンを動かしながら即座にそう答えた。今日の穂乃影は学校には行かないため、私服姿である。黒色の半袖に黒の綿パンツ。高校1年の女子とは思えないほどに可愛げのない私服姿だ。

「俺のどこが変人だ。俺は至って普通の若者だぜ。それよか、夏休みの宿題か? 精が出るな」

 影人は手を洗ったついでに冷蔵庫から冷えたオレンジジュースのパックを取り出し、穂乃影が掛けている対面のイスに腰を下ろした。そしてテーブルにジュースのパックを置き、付属のストローを突き刺す。つい先ほど、ファミレスで烏龍茶をけっこう飲んだはずだが、自転車を漕いでいる間に、喉はカラカラになったいた。

「・・・・・違う。夏休みの宿題は5日前に終わらせてある。今やってるのは、夏休み明けの授業の予習」

「げっ、マジかよ。俺、予習なんかした事ないわ。つーかお前すげえな。俺なんか夏休みの宿題あと半分以上あるぜ? 夏休みあと6日くらいで終わりなのにヤバい」

「・・・・・・・・・・あなた、呑気にしてる場合なの?」

「大丈夫だ。本気を出せば1日で終わる。今はやる気でないし、面倒な事は未来の俺に任せるさ」

「・・・・・・未来のあなたが過去のあなたにキレてるのが容易に想像できる」

 影人の言葉を聞いた穂乃影は、呆れたような表情を浮かべた。本当に、適当なところは適当な人間だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ