表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
604/2051

第604話 歌姫グッバイ(2)

「ふっ・・・・・マネージャーさん、大切にしろよ。じゃあ、さようならだ金髪。お前の事、今度は忘れないぜ。歌、頑張れよ」

 影人は金曜日には告げられなかった、別れの言葉を口にすると精一杯の笑みを浮かべた。未だに内心ではあの気持ちが燻り続けているが、それをソニアに悟らせるわけにはいかない。

「うん、ありがとう♪ 君からそう言ってもらえて、本当に嬉しい。・・・・・・・・・・でも影くん、ちょっと無理してない? 何かあったの?」

「ッ・・・・・!?」

 だが影人の想い虚しく、ソニアには悟られたようだった。

「べ、別に無理してないぜ? 俺はそんなヤワな人間じゃねえよ」

 影人は精一杯の笑みを変わらず顔に張り付けながら、ソニアの言葉を否定する。もちろん、この言葉は嘘で、ソニアの推察は当たっている。

「ふーん・・・・・・話したくないなら別にいいけど、無理はしちゃダメだよ? 君はたぶん、あんまり人に頼るような性格じゃないと思うけど、困ったり悩んでいたりするなら、全然人に頼っていいんだから。忘れないでね、影くん。どんな人にも、もちろん君にも心配してくれる人はいるんだからね? 私は君のこと心配する人間なんだから」

「ッ・・・・・・・落ちたもんだぜ、俺も。金髪如きに心配される事になるとはな」

 影人の言葉を嘘と見破ったのだろう。ソニアは影人に向かってそんな事を言って来た。真っ直ぐなソニアの言葉を受けた影人は、張り付けていた笑顔をやめ、そう言葉を漏らした。

「・・・・・別に悩みとかそんなんじゃないんだ。ただ、もしもそうだったらって不安事が1つだけあってな。それを確認する気力が、どうしても持てねえ。それだけの事だ」

 影人は前髪の下の両目を下に向けながら、ソニアに自分の本心を吐露した。悩み事の種が何なのかまでは言っていない。この言葉なら、ソニアが影人に対して何か疑問を持つことはないだろうと思い、影人はその言葉を口に出したのだった。

「へえ、影くんでもそんな気持ちになるんだね。なんか意外だなー」

「お前は俺をなんだと思ってるんだ・・・・・・・・俺も普通の人間だ。時たまに、そんな気持ちになる事くらいだってあらぁ」

 心底驚いたような表情を浮かべるソニアに、影人は呆れたような顔を浮かべた。

「ふふっ、そうだよね。影くんも人間だ。じゃ、昔馴染みからのありがーい言葉だよ」

 ソニアは少しだけ意地悪そうに笑うと、こう言葉を続けた。

「勇気と元気はいつだって湧いてくるもの。無理に答えを確認する必要はないんだよ? その2つが湧いて来たら、その時に答えを確認すればいいんだよ。以上、私からの励ましの言葉でした♪ どう勇気と元気、湧いて来た?」

「んなすぐに湧くかよ・・・・・・だが、一応礼は言っとくぜ。サンキューな、金髪」

 ソニアにそう聞かれた影人は、若干呆れてしまったが、普段通りの笑みを浮かべると感謝の言葉を述べた。柄にもなく励まされてしまったのが効いたのか、影人の気持ちは軽く、いやかなり軽くなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ