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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
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第595話 歌姫オンステージ16(2)

「ここが関係者席よ。と言っても、ここからソニアのライブを見るのは、私と君だけだけどね」

 5分後、影人はレイニアに案内されて関係者用の席へと来ていた。正面にはガラスが張られており、そこからライブ会場が見えるようになっている。機材やマイクなどを置いている事、それに位置的に考えると、ここは放送席と呼ばれるところのようだ。

「わざわざ案内してくださって、ありがとうございます。まさか、マネージャーさんが直接来てくださるとは思ってませんでした」

「いいのよ、ソニアから直接頼まれてたしね。それより、もう始まるわよ。あの子のライブ」

 影人とレイニアは翻訳アプリを使って会話を成立させていた。レイニアは影人の言葉にそう返すと、用意されていたパイプ椅子に座った。影人も、その隣に置いてあったもう1つのパイプ椅子に腰を下ろした。

「はーい! みんな今日は私の最終日ライブに来てくれて、ありがとー! 今日は思いっきり楽しんでいってね♪ じゃ、さっそく1曲目いくよー!」

 東京ドームの中心に設置されていたステージから、煌びやかな衣装を纏ったソニアが現れる。ソニアの登場と共に、客席は一瞬で最高潮にまで盛り上がる。ソニアは日本語で、ライブに参加してくれたファンにそう感謝の言葉を述べると、歌を歌い始めた。ちなみに、影人の席から見える範囲でも、全ての席は超満員である。

「〜〜♪」

 最初の曲はどこか優しさと切なさを感じさせる曲調だった。ソニアは派手な踊りなどは踊らずに祈るように歌っている。確かに、この曲調ならばそちらの方が自然に思えた。

「・・・・・・・・・上手いな。それに、いい曲だ」

 スピーカーから聞こえてくるソニアの歌声に耳を傾けながら、影人は思わずそう呟いた。気分が高揚するような曲ではないが、人の心に沁み入ってくるような、優しく語りかけてくるような、そんな曲だ。

「当然。あの子の歌う曲でいい曲じゃないなんてものはないわ。この曲はソニアのお気に入りの曲の1つでね。あの子といえば人を元気にさせる明るくて激しい曲が代名詞だけど、こういう静かな曲もあの子の歌の良さを引き出すのよ」

「へえ・・・・・確かに、そうですね」

 レイニアのスマホに出た日本語を見ながら、影人はその言葉に同意した。レイニアの表情はどこか誇らしげだ。

(にしても・・・・・・・・お前、本当に歌が上手くなったんだな金髪。あの下手くそだったお前が、今や世界の歌姫だ。きっと、死ぬほど努力したんだろうな・・・・・全く、大した奴だよお前は)

 ソニアの歌を聞きながら、影人はそんな事を思った。月曜日にソニアと会った時も思ったが、人生というやつは本当に分からない。何せ、影人の記憶の中にいるあの歌の下手くそだった少女が、今は満員の客が見守るステージの上にいるのだから。

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