第577話 歌姫オンステージ12(4)
「当初、私とラルバはこの異常な状況に混乱し、頭を悩ませました。このような事は過去に1度も例がなかったからです。それに殺された場所もバラバラ。私たちには何が何だか分かりませんでした」
「まあ、そりゃそうだろうな・・・・・・」
ソレイユの言葉に思わず相槌を打つ影人。闇奴や闇人は影人にも殺せない。光導姫以外に闇奴や闇人を完全に無力化する事は出来ない。だというのに、それらが殺されれば神とて混乱はするだろう。
「しかし、各国の協力の元に分かったのですが、殺された人物たちには、ある1つの共通点がある事が分かりました。それは・・・・・・・・・殺された人物たちが、全員救いようのない程までの極悪人であったという事です」
「極悪人・・・・・?」
「ええ。その3人は裏の世界で名の知れた組織のボスや幹部でした。その組織がやっていた事は、人間の闇の部分を抽出したようなものでした。人身売買、臓器売買、違法薬物の輸出に輸入・・・・・その他口を憚るような所業の数々をその3人はしていたのです」
ソレイユの表情が一瞬暗くなる。まあ無理もない。気持ちのいい話ではないからだ。影人も聞いていて、あまり気分がいいものではない。
「そして、その3人を殺したと思われる人物は、3番目の現場で、ある1人の光導姫に目撃されていました。その光導姫が言うには、その人物は――黒いフードと黒いローブに身を包み、大きな鎌を持った死神のような人物だったという事です」
「・・・・・・俺が今日出会った奴と特徴が一致してるな」
「・・・・・はい。闇奴や闇人を殺せた謎も、その人物が持っていた鎌が『フェルフィズの大鎌』なら、筋が通ります。あれは全てを殺す大鎌。過去には神すら殺した事のある大鎌ですから・・・・・・・・・・」
闇奴・闇人化した極悪人を殺す噂の人物。その人物が恐らく今日影人の前に現れた人物だ。しかし、それを推測出来たところで、謎が消えたわけではない。
「・・・・・・何者なんだろうな、あの黒フードは。動機も目的も正体も全て謎。ったく、どこかの誰かさんみたいだぜ」
「本当にそうですね。まあ、私たちが言えた義理じゃないんですが・・・・・・・・一応、この噂じたいは一部の光導姫や守護者の間でも広まっていたんです。そして、噂の人物が死神のような見た目をしている事から、一時期はその人物が守護者ランキング4位『死神』ではないかと疑われもしました。4位『死神』がその姿を見た事がない、と言われているのもあってです。ですが、やはり守護者がそういう事をする可能性はない、という結論になりました。ラルバも当然ですが、キッパリと否定しましたし」
ソレイユは影人に噂にまつわる状況の事も話した。この前の光導会議でもこの事は話し合われたが、光導十姫たちも守護者が件の人物ではないだろうとの意見を述べていた。




